2022.07.20 更新

長野・テール・ド・シエル

長野・テール・ド・シエル

株式会社テール・ド・シエル

専務取締役 ・栽培醸造責任者
桒原 一斗 氏

天空の大地に想いを馳せて


日本ワインコラム | 長野 テール・ド・シエル

目線を遮るものは何もない。目前にブドウ畑を捉えながら、真直ぐ視線を送れば、八ヶ岳連峰や北アルプス、中央アルプス、そして富士山までもが遠くで連なる様子が見え、眼下には御牧ケ原の台地や小諸市内が見渡せる。山の下の方から風が優しくふわーっと吹き上がる。心地よい風の音、そして鳥と虫の声。気温は山の下の市内に比べると低く、7月でも涼しさを感じる程だ。足を置く土はフカフカと気持ちがいい。ずっとここに立っていたい。そう感じさせる場所である。

写真を眺めるだけでも深呼吸したくなってしまう。畑から見える景色は息を飲む美しさだ。 ▲ 写真を眺めるだけでも深呼吸したくなってしまう。畑から見える景色は息を飲む美しさだ。

テール・ド・シエル(Terre de Ciel)は、天空の大地という意味のフランス語。長野県小諸市糠地地区にあるワイナリーは標高950m、隣接する畑は標高920-940mに位置しており、日本一標高の高い場所にあるワイナリーだ。ブドウ畑から雲海が見える日もあるというのだから、その高さをお分かり頂けるだろう。
今回は、そこで栽培と醸造の責任者を務める桒原さんにお話を伺った。

畑の入り口にある熊の置物はワイン・グローワーの家族を表しているものだそう。 ▲ 畑の入り口にある熊の置物はワイン・グローワーの家族を表しているものだそう。

一目ぼれの力

異色の二人がタッグを組む

2015年にこの地でブドウ栽培を開始し、2020年にはワイナリーを設立して自家醸造も手掛けるようになった。最初にワイナリー設立に向けて動き始めたのは、桒原さんの義父の池田さん。池田さんの前職は通信系会社の役員で、定年退職後、第二の人生としてワイン造りの道に進みたいと考え、千曲川ワインアカデミーを卒業されたという、大変パワフルなお方だ。

そして、桒原さんは、そのチャレンジの傍で当初は池田さんの相談役として、そして2020年のワイナリー開設からは池田さんと二人三脚で一緒に走り続けている。桒原さんの経歴も大変興味深い。元々は消防士としてキャリアをスタートされたが、消防士の仕事の関係で指定障がい者支援施設「こころみ学園」を訪れる。同学園が運営するココ・ファーム・ワイナリー(同ワイナリーの詳細はこちらをどうぞ。)で、知的障がいを持つ学園生が労働しながらワイン造りをしていることに興味を持ち、ボランティアとして通う中、ご自身も学園生と共にワインを造りたいと思い、転職されたという。そこで15年以上、ブドウ栽培とワイン醸造の経験を積んでこられたのだ。

ワイナリーには日々の暮らしを彩る食器類が展示されている他、美術館も併設されている。
また、隣にはパン屋さんがあり、焼き立てのパンのいい匂いが漂ってくる。お腹がすくなあ。。。
▲ 2020年のワイナリー開設以降、池田さん(左)と桒原さん(右)がタッグを組んでワイナリーの運営に当たっておられる。

前例がないなら自分が前例になればいい

池田さんから畑の場所をどうすべきか相談があった際、桒原さんは、標高の高い場所がいいのではないかとアドバイスをされたという。小諸市は高品質なブドウを育てているワイナリーもあることから有望視していたが、ヨーロッパ系品種を育てるのであれば冷涼な場所が良いと考え、同市内でも特に標高の高い場所が良いと踏んでいた。
池田さんが畑探しを続ける中、小諸市から糠地地区を紹介され、今の畑に出会う。そして、畑からの絶景に一目ぼれ。相談を受けていた桒原さんもこの景色に心を奪われたそうだ。
土地入手の段になって県に相談した時は、あまりにも標高が高いのでブドウ栽培には適さないと反対されたそうだ。長野で育てるのなら、県名産のメルロとシャルドネが有望で、この場所は冷涼すぎると。それでも、この場所はその他のヨーロッパ系品種を育てるにもポテンシャルが高いと見込んでいた。冷涼だが、日照時間が長く、雨が少ない。風もある。寒暖差が大きく、酸がしっかりと残るはず。
この考えが正しいものだったと確証したのが、2017年に池田さんが近くのワイナリーに委託醸造をお願いしたソーヴィニヨン・ブランの仕上がりを確認した時。きれいな酸味が残ったエレガントな仕上がりで、県の考えもガラッと変わった。今では新規就農希望の方に、なるべく標高の高いところで、メルロやシャルドネ以外の品種の栽培も推奨しているそうだから驚きだ。前例がないからといって諦めるのではなく、自らが前例となって後進を育てていく。リスクは避けるのではなくマネージするものと捉え、果敢にチャレンジされる姿に感服する。

テロワールを追い求めて~天・地・人~

「テロワール」という言葉を聞いたことがある方も多いだろう。ワインの味わいを決める大変重要な要素で、ワインをかじったことのある人なら、「このワインはテロワールがうまく表現されたものだ」なんて謳い文句を耳にしたことが何度かあるだろう。一方で、この言葉の定義を日本語で表現するのはとても難しく、人によって解釈に幅がある言葉でもあるのも事実だ。土壌や気候といったブドウの栽培環境をイメージしている人もいるだろうし、その土地の風土をイメージされる方もいるだろう。
そんな中、桒原さんは、「天:気候」、「地:土壌」、「人:造り手の考え」が三位一体となって表現するものがテロワールだと定義されている。テール・ド・シエルの味わいは、この三要素が重要な骨格となっているので共有したい。

天:気候について

日本一標高が高い場所にあるだけあり、気候は冷涼。冷涼な気候に合う、ヨーロッパ系品種を中心に育てている。最初に植えたのはソーヴィニヨン・ブラン。その後、ピノ・ノワール、メルロ、シャルドネ、ピノ・グリと品種を増やしてきた。
畑は西南西に向いており、日中の日照量、日照時間共に十分だ。夏場は34、5℃まで気温は上がり、ブドウの糖度も上がる。一方、太陽が沈むと一気に冷え込むので昼夜の寒暖差があり、ブドウの酸持ちが良い。そして、長野県は秋が長い。年間降雨量は少なく、特に10月中旬以降の雨が少ないので、長い秋の間にブドウが熟すことができる。そこで、後から開墾した畑には、リースリングやシュナン・ブラン、シラー、カベルネ・フラン、サヴァニャンといった成熟に時間がかかる品種を植えている。

山の中にあるワイナリーと畑。異なる方向を向く斜面をそのまま活かし、区画がいくつか設けられている。ブドウの木が並ぶ様子も美しい。 ▲ 山の中にあるワイナリーと畑。異なる方向を向く斜面をそのまま活かし、区画がいくつか設けられている。ブドウの木が並ぶ様子も美しい。

畑には、常時山の下から風が吹き上がる。雨が少ないことに加え、この風によって、湿度が溜まらずブドウが病気になりにくい。また、ここまで標高が高くても風によって冷気が流されるので凍害も起らないという。
そして、何より、人里離れた場所にあることから空気がきれい。健康なブドウが育つ条件が揃っているのだ。 もう一つ面白いのが、霧の発生である。この辺りは風が強く、畑の隣に国有の防風林があるのだが、その先には沢があるそうだ。昼夜の寒暖差の影響で沢から霧が発生し、朝になると畑に霧が立ち込める。その後、太陽と風の力で霧が晴れる。10月頭の収穫の時期になると、夜の冷え込みもグンと強くなる。濃い霧が立ち込め、ブドウに貴腐が付くそうだ。桒原さんは、貴腐が付いたブドウをその他のブドウと一緒に仕込む。そうすることで仕上がるワインの奥行きが増すのだ。実は貴腐ブドウを使う判断をしたのは、もがき苦しんでいた時だった。2020年は残暑が厳しく、シャルドネの酸がどんどん下がっていく一方、糖度が上がってこなかった。このままではアルコール度数も上がらないな…と思い悩んでいた時に、シャルドネに貴腐が付着し始めたそう。ココ・ファーム・ワイナリーでブドウ栽培をしている際にも貴腐ブドウを扱ったことがあり、いい貴腐はブドウにプラスに作用することが分かっていた。実際に貴腐が出たシャルドネを食べてみると美味しく、貴腐が付いたシャルドネを混ぜ込んで醸造することを決め、吉と出たそうだ。お天道様は見ている。真面目にやっている人には手を貸してくれるんだなぁと思わせるエピソードである。

地:土壌

畑の土に目を向けてみよう。元々雑木林だったところを開墾して畑にしているそうだ。土を削って平面に造成した方が機械化できるし、日照量や風の当たり方も均一になり、ブドウ栽培上管理が容易になる。しかし、桒原さんは、造成するとその土地の歴史も削られてしまうと考え、元々の地形をそのままに、色んな角度の斜面の畑を維持している。同じ痩せた土地でも、造成した土地と元々の土地を活かしたものでは、仕上がったワインの味わいの深さが全然違う。ココ・ファーム・ワイナリーで体感していたことでもあった。ブドウの成熟も収穫のタイミングも様々になるが、その方が個性的で面白い。同じシャルドネでも黄緑色のものもあれば、黄金色になるものもある。それらを一緒に仕込むことで味わいが複雑になるのだ。
急な斜面なので機械化は難しく、トラクターのようなものは使えない。そこで、斜面用のクローラーを使うことになる。車輪駆動の機械の場合、タイヤがある4点に圧力が集中し土が固くなってしまうが、クローラーの場合は面で重さを支えるので土が固まらない。ふかふかの状態を維持できるのだ。

テールドシエル畑
テールドシエル畑と小屋
▲ 山の斜面を維持しているため、畑は急斜面だ。その分水はけの良さは担保できるが、機械化が難しく手作業が多い。株元の雑草もこれから刈るところだと言う。これだけの作業を地道に行う姿に尊敬の念が尽きない。

土壌は粘土質。昔は、畑の真ん中にある水脈を使って池を作り、必要に応じて農作物用の水を確保していたそうだ。今はこの水脈に沿って穴を深く掘り、排水溝(明渠)としているそうだ。斜面と明渠によって水はけがいい状態が保たれている。
土作りの観点では、牛糞やブドウの搾りかすといった有機肥料で土壌改良を行っている。除草剤は使わない。雑草が伸びると湿気が溜まりやすくなるので、雑草は伸ばさないよう、こまめに刈っているそうだ。雑草がない方が、ボルドー液(硫酸銅と生石灰を混ぜた殺菌剤)もしっかりと散布できるというメリットもある。

人:考え

桒原さんは、ワインを造る上で大事なのは、畑で質のいいブドウを栽培することだと断言する。比率で言えば、95%以上が畑のブドウで、醸造のテクニックは5%にも満たない、と。ブドウを育てるのには手をかけるが、醸造の過程では見守る程度。
ブドウ栽培のサイクルは冬、剪定のタイミングからスタートする。桒原さんが大好きな時間だ。去年の反省と今年の栽培イメージを頭の中で描いて、ブドウの木一本一本見ながら考えを巡らせるという。もちろん剪定が終わった後も畑に毎日来る。ブドウの木を観察して必要な手入れをするのだ。ただ、マニュアル化はしない。なぜなら栽培環境は毎年違うから。ブドウと対話を繰り返す中で、ブドウが必要とすることが分かるようになるそうだ。

畑の脇にあるバラ。目に美しいだけでなく、ブドウ栽培上も欠かせないパートナーだ。 ▲ 畑の脇にあるバラ。目に美しいだけでなく、ブドウ栽培上も欠かせないパートナーだ。

上記の通り、化学肥料や除草剤は一切使用しない。病気対策にはボルドー液を使うが、ブドウ畑に植わっているバラも一役買う。バラはブドウよりも虫やカビといった病気にかかりやすい性質があるので、バラの状態を見ることで、ボルドー液を散布する等、先んじてブドウ対策を打つことができるのだ。また、バラの開花の直後くらいにブドウも開花するので、開花時期も予測できるという。

ブドウの実の下にある葉を除葉する様子を見せてくれた桒原さん。 ▲ ブドウの実の下にある葉を除葉する様子を見せてくれた桒原さん。

ブドウが開花し、実が付き始めた後の除葉は限定的に行う。実を太陽に当てすぎると酸が落ちてしまうので、実の下にある葉だけを取って通気性の確保を行う。コガネムシ対策で殺虫剤も散布するが、回数は1回だけ。最小限の使用に留めている。同じ虫でもアサギマダラと呼ばれる渡り蝶が知らせることも面白い。500頭くらいが一気に畑にやってくるとちょうどピノ・ノワールの収穫のタイミングになるそう。文字通り、虫の知らせというやつだ!

毎日畑に出ているから、収穫のタイミングも「今だ!」と確信することができるそう。お伝えした通り、畑は異なる方向を向く斜面に植わっていて、熟度が異なる。中には貴腐が付いているものもある。桒原さんは、ブドウの個性を均一化するのではなく、様々な個性をそのままに活かすことを大事にしている。その上で、色んなタイプのブドウを一緒に絞るのだ。その方が複雑味が増すし、面白いという。

こんな風にブドウ一つ一つと向き合って、個性を大事に育てている姿を拝見して、ここで育つブドウは幸せ者だなぁと思わずにいられなかった。こんな学校の先生がいたら、絶対人気者になるに違いない。

テロワールに対する考えを語って下さった桒原さんは、畑への愛情に溢れている。 ▲ テロワールに対する考えを語って下さった桒原さんは、畑への愛情に溢れている。

畑やブドウに対する愛情がハンパなく強い桒原さん。

この畑から見える風景やここに立った時に感じる風をワインに表現したい。

と仰った言葉が忘れられない。

わが子を見守る親のように

醸造のテクニックがワインに占める割合は5%未満と仰っていたが、天塩にかけて育てたブドウ達にとって必要と考える醸造のサポートは惜しまない。

右側にあるのが日本初上陸のバスケット・プレス。威風堂々とした佇まいだ。 ▲ 右側にあるのが日本初上陸のバスケット・プレス。威風堂々とした佇まいだ。

ワイナリーに入ってまず目に入るのは、垂直式のバスケット・プレスだ。シャンパーニュ地方でよく見られる形式のプレス機だが、日本初でイタリアから導入したと言う。主流のバルーン・プレスの場合、2-3時間で75%の搾汁率を達成できるが、バスケット・プレスの場合、24-48時間かけてゆっくり果汁を絞る。ブドウを優しく扱うことで、皮の裏や種の周りの美味しさを余すことなく抽出することができる。実際、絞った果汁を飲んだ時、導入して良かったと思った機械の一つだそうだ。

プレス機やタンクを台の上に置いて、上から果汁を移動させる様子を実演して下さった。 ▲ プレス機やタンクを台の上に置いて、上から果汁を移動させる様子を実演して下さった。

絞った果汁は、すぐにタンクに移していく。その際、ポンプは一切使わない。ポンプを使って果汁を吸い出したり吐き出したりする過程で果汁が酸化してしまうのと、果汁の移動距離が長くなり、果汁に振動を与えてしまうからだ。桒原さんは、重力(Gravity)を使って高い場所から低い場所に短い距離で果汁を移動させるグラヴィティ・フロー(Gravity Flow)という手法を用いる。ポンプよりも果汁に与える振動が少なく、果汁の酸化リスクが低い。つまり果汁を優しく扱うことができるのだ。桒原さんは、澱引きもグラヴィティ・フローを用いて丁寧に行うという。

質の高いブドウ栽培を徹底していることから、補酸・補糖は一切行わない。発酵はブドウに付着している野生酵母のみで行い、亜硫酸の添加も一切行わない。その為、悪い菌が活発に動かない環境にする必要があるので、温度管理を徹底して行う。収穫したブドウは5℃に設定した冷蔵室で一晩冷やし、悪い菌を動かさないようにする。搾汁も10-12℃程度に冷やした環境で行う。発酵・熟成の過程でも温度管理を徹底。発酵期間中は温度を上げるが、熟成期間中は15℃以上に温度が上がると悪い菌が発生しやすくなるので、11~12℃程度に管理しているそうだ。発酵・熟成期間は冬場も続く。冬の気温は氷点下になるので、暖房を入れ、微生物の活動がきちんと終わるようにするそうだ。微生物的に安定しているので、ノン・フィルターで仕上げたとしても、予期せぬ微生物による瓶内再発酵が起こらない。

樽に眠るワインを試飲させて頂いた。どのワインも芳醇な香りを放ち、ワインがなくなった後もグラスから香りが立ち上がってくる。果実味と酸味のバランスも素晴らしく、樽毎購入させて下さい(そんなお金はないけど・・・涙)!と言いたくなる味わいだ。今からリリースが待ち遠しい。 ▲ 樽に眠るワインを試飲させて頂いた。どのワインも芳醇な香りを放ち、ワインがなくなった後もグラスから香りが立ち上がってくる。果実味と酸味のバランスも素晴らしく、樽毎購入させて下さい(そんなお金はないけど・・・涙)!と言いたくなる味わいだ。今からリリースが待ち遠しい。

醸造の過程で重要なのは、ブドウが正しく活動するように見守ることだと言う。基本は優しく。ブドウがなりたい姿を見極め、環境を整える。畑での桒原さんが学校の先生であるとすると、ワイナリー内での桒原さんは、わが子の成長を見守る親のようでもある。

コミュニティを創る

ワイナリー開設後、他のブドウ農家から委託醸造を受けるようになってきたが、委託醸造を受ける際、必ず質の高いブドウを栽培するようお願いしているという。上述の通り、桒原さんは醸造の過程で補酸も補糖も一切行わず、野生酵母でワインを仕込む。美味しいワインを造りたいと思うのであれば、質の高いブドウがないと始まらないのだ。理由はそれだけではない。桒原さんは、質のいいブドウを造る農家が増えることが、周辺地域の産地化にも繋がると考えているのだ。小諸市がワイン産地として更に発展することを願ってのこと。自分だけではなく地域のことを考える。視野が広く長期目線だ。

常に進化は続けていきたいが、今のブドウ栽培・ワイン醸造手法に納得していると言う。その中で、今後、力を入れていきたいのは人との繋がりだ。これまでは、質のいいブドウを育てて、美味しいワインを造ればいいと考え、人との接点は多くなかった。しかし、実際にワイナリーの運営に携わるようになり、飲み手や伝え手の有難さをひしひしと感じたという。人との繋がりをどう発展させていくか。これを次のステップとして考えておられる。実は、義父の池田さんが中心となって、最近、「Nukaji Wine House(糠地ワインハウス)」をオープンされたとのこと。まさに、地域の活性化に繋がる面白い取り組みなので、紹介したい。

こちらのワインハウスはワイナリーから車で数分程度山を下ったところにある。素敵な古民家で、一歩足を踏み入れると、アメリカの重厚なアンティーク家具や素敵な絵画等の調度品が、品良く配置されていて、なんともリッチな造りなのだ。ワーケーションが可能なように、執務室や会議室まで用意されている。テラスに出れば、バーベキューセットに広い芝生。きれいなお花が咲いていて、少し視線を遠くに送るとブドウ畑が見える。ここに住みたい!と思わずにはいられないような場所なのだ。

執務室や会議室
バーベキューセットに広い芝生
▲ 施設中は重厚なアンティーク家具や調度品が品良く並び、テラスから中庭に出ると絶景が迎えてくれる。

池田さんはここで、自社ワインのみならず、委託醸造を受けた地元のワインも販売している。また、ワインツーリズムの拠点となるよう、宿泊施設としても開放しているのだ。施設は1日1組で5~12名程が宿泊可能。小諸市内には現在、8軒のワイン生産者がいる。遠方から来られるお客さんがワイナリー巡りを楽しむ拠点となったり、ブドウ収穫期にはボランティアの方の宿泊拠点となったり、小諸のワイン生産者が気軽に集まって話し合って、そのまま泊ったり。色んな形で人々を繋ぐハブになりたい。そういう思いが詰まった場所なのだ。大々的に宣伝はしておられないとのことだが、お客さんは絶えることがないそうだ。
そりゃあそうだ。誰だって利用したい。そう思わせる施設である。こういう場所があるからこそ、人が集まる。人が集まれば、何か面白いことが見つかる。何か面白いことがあれば、更に人が集まる。そういうプラスの循環が起り始めているのだ。目が離せない。

施設の中にワインショップが併設されており、テール・ド・シエルのもののみならず、委託醸造を受けている先のワインも購入することができる。 ▲ 施設の中にワインショップが併設されており、テール・ド・シエルのもののみならず、委託醸造を受けている先のワインも購入することができる。

ワインを飲んで思い浮かべてほしいのは、テール・ド・シエルの風土だからという理由から、ワイナリーの見学は不可とのことだが、テール・ド・シエルの畑は一般公開しているそう。ワインの質は95%以上が畑のブドウで決まるという桒原さんのお言葉からお分かり頂けると思うが、この畑が全てを物語るのだ。実際に足を運んでみて、この畑を見ながらワインを飲みたいという気持ちがフツフツ沸いてきたし、何度もこの景色に包まれたいと強く思わされた場所だ。是非、一度テール・ド・シエルの畑に足を運んで頂きたい。そして、この雄大な景色、風、匂い、音、味・・・五感をフルに使って感じてほしい。そうすれば、必ず、桒原さんの造るワインにテロワールを見出すことができるはずだ。仲間と糠地ワインハウスで数泊して、小諸のワイナリーを巡るのも楽しいだろう。次の旅行先はここに決まりである。

Interviewer : 人見  /  Writer : 山本  /  Photographer : 吉永  /  訪問日 : 2022年7月20日

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