2024.08.23 更新

岡山・domaine tetta

岡山・domaine tetta

tetta株式会社

代表取締役・高橋 竜太 氏
栽培醸造責任者・菅野 義也 氏

地元への想いが世界に羽ばたくワインになって

日本ワインコラム |domaine tetta

山道をしばらく登っていくと、突如シャープでモダンな建物が現れた。一瞬「こんなところに美術館?」と思ったのだが、視線を奥にやると一面のブドウ畑が目に入り、ワイナリーだと気付かされる。 ここが今回の訪問先、岡山県新見市哲多町にあるdomaine tettaだ。洗練された空間使いと眼下に広がる一面のブドウ畑を目にすると、海外のワイナリーに来たような錯覚に陥ってしまう。

domaine tettaのホームページより。ワイナリー入り口からしてスタイリッシュ! domaine tettaのホームページより。ワイナリー入り口からしてスタイリッシュ!
ワイナリーのテラスから見える景色。ばーっと広がるブドウ畑に圧倒される。 ▲ ワイナリーのテラスから見える景色。ばーっと広がるブドウ畑に圧倒される。

そして取材のお相手は、代表の高橋さんと2020年から栽培・醸造長を任されている菅野さん。
高橋さんは泰然自若とした語り口の中に、青い炎のような静かな情熱と強靭な精神を感じさせられる方。一方の菅野さんは誠実で真直ぐな眼差しが眩しく、ストイックと言ってもいいほど真面目にワイン造りに向き合っておられるのがひしひしと伝わってくる。この2人が目指す世界はどんなところなのだろうか?

高橋さん(左)と菅野さん(右)。短時間のインタビューだったが、信頼関係が垣間見られ、いい関係だなぁ~としみじみ思わされた。
▲ 高橋さん(左)と菅野さん(右)。短時間のインタビューだったが、信頼関係が垣間見られ、いい関係だなぁ~としみじみ思わされた。

ワインありきでスタートしたのではない

まず驚いたのが、高橋さんの家業が新見で代々続く建設業であること!全くジャンルの違うビジネスを経営する二刀流なのだ。でも、なぜ建設業からワインの世界に飛び込んだのだろう?

ワイナリーの前に広がる8haの広大なブドウ畑。圧巻の景色だが、少し前までは全く違う姿だった。平成初期に県による造成で出来た生食用ブドウの畑だったのだが、経営していた農業法人が撤退し、20年近く耕作放棄地となっていたそう。ビジネスとして成り立たなかったのは仕方ない。しかし、地元の景色が荒れていく姿を見るのは、やはり辛い…。そういう想いもあり、高橋さんは手を挙げたという。自分がここでブドウ栽培しワインを造る、と。
しかし、なぜブドウ栽培をしたことも、ましてやワイン醸造の経験がない高橋さんが、ワイナリーを造ろうと思ったのだろう?・・・その秘密は畑の環境にある。

15年ほど前までは耕作放棄地だったとは信じられないほど、整然と並ぶブドウ畑。 ▲ 15年ほど前までは耕作放棄地だったとは信じられないほど、整然と並ぶブドウ畑。

畑の秘密①:日本で珍しい石灰質土壌

畑に足を踏み入れると、白い岩や石が畑のあちらこちらにある。新見市は南北に広がり、場所によって土壌環境が異なる。南に位置する哲多町は、石灰岩と赤土で構成される石灰岩土壌を誇る。石灰質はブルゴーニュやシャンパーニュ地方といったワインの銘醸地に多く見られる土壌で、保水と水はけのバランスが良いことで知られている。日本で石灰を採掘できる場所は非常に限られている上、石灰岩土壌でブドウ栽培しているワイナリーは更に限られる。高橋さん曰く「日本では、domaine tetta以外で1、2社程度ではないか」とのこと。これはかなり貴重な武器である。実は、この土壌環境に目を付け、以前、勝沼醸造がこの地でメルロ、シャルドネ、ピノ・ノワールといった欧州系ワイン用ブドウを栽培していたそう。大手も認めるポテンシャルの高い場所なのだ。

化石化したサンゴ礁が隆起したカルスト台地にある畑の土壌には、白い岩や石がゴロゴロと転がっている。畑の中には、雨でドリーネ(石灰岩地域で見られるすり鉢状の窪地)が出来て地表が陥没したところもあるそう。 ▲ 化石化したサンゴ礁が隆起したカルスト台地にある畑の土壌には、白い岩や石がゴロゴロと転がっている。畑の中には、雨でドリーネ(石灰岩地域で見られるすり鉢状の窪地)が出来て地表が陥没したところもあるそう。

畑の秘密②:ブドウ栽培に適した環境

以前は生食用ブドウを栽培していた場所というだけあり、ブドウ栽培に適した環境だ。
例えば、「晴れの国・おかやま」と称されるだけあり、降雨量の多い日本の中では、比較的晴れの日が多く、日照時間が長い。また、中国山脈を背に背負う場所に位置し、畑が標高400-420mのカルスト台地上にあることから、寒暖差が生まれ、ブドウの色付きも良く、酸落ちがしにくい。更に、南西に向かう斜面の谷から風が吹くことで、ブドウの熱を冷まし、湿気が溜まりにくい環境にある。

 畑には、ブドウにも畑で作業する人にも嬉しい心地よい風が吹く。
▲ 畑には、ブドウにも畑で作業する人にも嬉しい心地よい風が吹く。

畑の気候と土壌が、ワイン用ブドウ栽培に必要とされる条件を満たしている。これは絶対武器になると思った

と高橋さん。
ダイヤモンドの原石を見つけたと言っても過言ではないだろう。ワインの造り手の多くは、ワインという目的があって栽培適地を探すという手順を踏むことが殆どだが、高橋さんの場合は地元の環境を深く調べた結果、ワインに行きついたという逆のアプローチなのだ。異業種から飛び込む度胸や行動力にも目を見張るが、柔軟な発想や本質を見抜く力にも感服する。

少しずつ見えてきたあるべき畑の姿

2009年に会社を立ち上げ、畑の整備に取り掛かかり、10年時間を費やし、少しずつ畑を広げ今の姿になっていったと言う。

耕作放棄地を開墾した際に出てきたというパンダの置物。どこかの公園の遊具だったのだろうか…。このパンダはdomaine tettaのシンボル的存在で、シャルドネのエチケットにも用いられている。 ▲ 耕作放棄地を開墾した際に出てきたというパンダの置物。どこかの公園の遊具だったのだろうか…。このパンダはdomaine tettaのシンボル的存在で、シャルドネのエチケットにも用いられている。

自然とうまく共存するブドウ栽培

domaine tettaでは、可能な限り自然な環境でブドウを栽培すべく、除草剤や化学肥料を使わない。岡山県内では北側に位置することから台風の直撃はほぼ無いか、年々降雨量は増えており、畑ではレインカットが欠かせない。レインカットがあることで病気の発生率がぐんと下がり、農薬の使用量もかなり抑えられるので、環境にも人にも優しい栽培が可能なのだ。

レインカットなしの畑もあったそうだが、農薬の量を増やしても糖度も収量も上がらないことから、レインカットは必須と判断。現在は、全てにレインカットがかけられている。全てにレインカットを施すのも、こんなに広い畑にぐるっと電柵を設けるのも大変な作業だったに違いない… ▲ レインカットなしの畑もあったそうだが、農薬の量を増やしても糖度も収量も上がらないことから、レインカットは必須と判断。現在は、全てにレインカットがかけられている。全てにレインカットを施すのも、こんなに広い畑にぐるっと電柵を設けるのも大変な作業だったに違いない…

ブドウ栽培の環境に恵まれてはいるが、山が近く獣害に悩まされたそうだ。アナグマやイノシシ、サルといった野生動物が畑に入らないように、8haの畑の外周全体をぐるっと電柵とワイヤーメッシュで囲って対策を行っている。それだけではない。猟犬としてトレーニングを受けたオオカミ犬2頭を飼育し、彼らを畑に放って獣を仕留めてもらっているのだ(「畑は最高のドッグラン」こと。笑)。

更に、ブドウの収穫期にはプロのトレーナーが飼育する先輩猟犬とハンターが実際に山に入り、山に生息する獣も仕留めていくそう。こうして、獣の数自体を減らすことで獣害も劇的に減ってきたと言う。こうした対策をする前は8樽分のワインを失ったこともあるというのだから、ワンコ&囲いフェンスのパワーは偉大である。

 ブドウ品種のアルバリーニョとカベルネ・フランから命名された、畑のすぐそばで飼われているアルバちゃんとフランちゃん。菅野さんが近づくと、しっぽブンブン、キュンキュン鳴いて喜びを爆発させる姿に悶絶。
▲ ブドウ品種のアルバリーニョとカベルネ・フランから命名された、畑のすぐそばで飼われているアルバちゃんとフランちゃん。菅野さんが近づくと、しっぽブンブン、キュンキュン鳴いて喜びを爆発させる姿に悶絶。

多種多様な品種を栽培する

畑には多種多様なブドウが植わっている。畑を開墾した当初は近隣のワイナリー数も少なく、そのワイナリーも第3セクターとして運営されるなど、本格的なワイン造りを行っているところはなかった。そんな状況もあってか、纏まった本数の希望する苗木を入手することが難しく、生食用ブドウも含め多種多様な38品種を栽培していたそう。最近は、以前まで行っていた生食用ブドウの販売を止め、ワインとジュースのみの販売に方針をシフト、栽培するブドウ樹も22品種まで数を絞ってきたそうだ。それでも品種数は多い!

ブドウは区画毎に仕立て方を変えているそう。こちらは西日本でよく見られるWH型の棚仕立ての畑。マスカット・ベーリーAや安芸クイーンの栽培で採用している。その他にもカーテン型の棚仕立てや、ギュヨやコルドンといった垣根仕立ても採用。 ▲ ブドウは区画毎に仕立て方を変えているそう。こちらは西日本でよく見られるWH型の棚仕立ての畑。マスカット・ベーリーAや安芸クイーンの栽培で採用している。その他にもカーテン型の棚仕立てや、ギュヨやコルドンといった垣根仕立ても採用。
15年近くブドウ栽培を続ける中で、畑の環境に合う品種も分かってきた。例えば、安芸クイーンは最も収量が多い品種だ。広島県原産の生食用ブドウで、高橋さん曰く、「食味は抜群に美味しいのだけど、色付きも難しく、軸が弱いこともあって、流通されにくい品種」だそう。domaine tettaでは樹齢が20年を超える古樹の安芸クイーンを栽培しており、色付きも良く、テッタを代表するロゼに仕上がっている。他にも、白ブドウではシャルドネ、黒ブドウではカベルネ・フランやマスカット・ベーリーAは質・量ともに満足度が高いとのこと。
熟すのはこれからだと分かっていても、今すぐ頬張りたくなるほど艶やかに成長しているブドウ。 ▲ 熟すのはこれからだと分かっていても、今すぐ頬張りたくなるほど艶やかに成長しているブドウ。

周辺環境と品種の相性を判断する上で大事にしているのが、「単一でワインが仕込めるかどうか」という基準。上記以外では、黒ブドウでピノ・ノワールやメルロ、白ブドウではピノ・グリ、ソーヴィニヨン・ブラン、ゲヴェルツトラミネールなどが対象となる。最近、白ブドウのアルバリーニョとプチ・マンサンも単一で仕込み始めたそうで、期待を持っている品種だそうだ。現在は収量が少ないためブレンドとして仕上げられている品種でも、将来的に単一でワインになるかもしれないので、今後も目が離せない。

ドメーヌとしてのこだわり

暫くは委託醸造でワインをリリースしてきたが、2016年に念願の醸造所が完成する。耕作放棄地となっていた畑を再生し、価値のあるものを生み出したいという想いからワイン造りをスタートした高橋さんにとっては、ブドウ栽培、醸造、瓶詰めまで全てを行う「ドメーヌ」として生まれ変わったこのタイミングは、喜びもひとしおだっただろう。

domaine tettaのホームページより。ワイナリーの建築デザインは、岡山出身で世界的なインテリアデザイナー、Wonderwall・片山正通氏によるもの。コンクリート製のシンプルな1階建てに見えるが、屋上や地下、テラスといったスペースがある。 domaine tettaのホームページより。ワイナリーの建築デザインは、岡山出身で世界的なインテリアデザイナー、Wonderwall・片山正通氏によるもの。コンクリート製のシンプルな1階建てに見えるが、屋上や地下、テラスといったスペースがある。

人為的な負荷をかけない醸造スタイル

醸造設備や貯蔵庫はワイナリー地下にあり、外気の変化の影響を受けにくいようになっている。醸造所での作業は、可能な限り人為的な負荷をかけないというもの。詳しく見ていこう。

ワイナリー入口すぐは、ブドウ畑を見下ろすテラスまで続くカフェスペースになっている(2024年7月現在、カフェは休業中)。こちらは、カフェスペースのガラス張りの壁から見た、階下の醸造スペースの様子。壁には、ネオン形式の現代アートが掲げられていて、ポップな雰囲気を醸し出している。 ▲ ワイナリー入口すぐは、ブドウ畑を見下ろすテラスまで続くカフェスペースになっている(2024年7月現在、カフェは休業中)。こちらは、カフェスペースのガラス張りの壁から見た、階下の醸造スペースの様子。壁には、ネオン形式の現代アートが掲げられていて、ポップな雰囲気を醸し出している。

きちんと熟した健全なブドウを収穫するので、補糖・補酸は行わない。また、酸化防止剤の添加も最小限に抑えられている。ポンプを使用せず、高低差を利用したグラヴィティ・フローで果実やワインを移動させることで、ブドウへの衝撃を減らし優しく取り扱い、野生酵母による発酵を経て、ステンレスタンクや木樽で熟成の時を待つ。そして、瓶詰時はフィルターや清澄・濾過といった工程も行わない。添加物や人為的なプロセスが少ない分、一般的なワイン醸造に比べて工程が少ないが、その分、ワインの状態を細かく観察し、都度必要な判断を下すことが肝要だ。数値化が難しい人の感覚というものも求められる瞬間でもある。

高低差を利用したグラヴィティ・フローが行いやすいよう、写真の奥のスペースが2階建てになっている他、フォークリフトが完備されている様子が分かる。 ▲ 高低差を利用したグラヴィティ・フローが行いやすいよう、写真の奥のスペースが2階建てになっている他、フォークリフトが完備されている様子が分かる。
 ステンレスタンクも様々なサイズのものが用意されている。国税庁傘下の酒類総合研究所による野生酵母の研究対象施設にも選ばれている。 ▲ ステンレスタンクも様々なサイズのものが用意されている。国税庁傘下の酒類総合研究所による野生酵母の研究対象施設にも選ばれている。

多品種栽培するからこそ可能なブレンドワイン

多品種を栽培しているので、仕込みの数も多い。収穫量に合わせて、様々な大きさのタンクを用意し、個別に対応しているそうだ。収量が多い品種では、区画を分けて仕込むものもあるそう。8haの広さの畑の管理と醸造の全てを、7人の常駐+数人のパートタイムの方で対応されているとのこと。常にフル稼働に違いない…

domaine tettaのワインは、エチケットにも拘りがあり、ジャケ買いも楽しい。中央2本は、畑から出てきたパンダの置物をモチーフにしたシャルドネ。その左はプチ・マンサンを用いたワインで、新しく単一で仕込んだことから、未来をイメージさせるロケットに。右端はゲヴェルツトラミネール。ゲヴェルツトラミネールの代表的な産地アルザス地方のシンボル、コウノトリが描かれている。それぞれにストーリーがあって面白い。 ▲ domaine tettaのワインは、エチケットにも拘りがあり、ジャケ買いも楽しい。中央2本は、畑から出てきたパンダの置物をモチーフにしたシャルドネ。その左はプチ・マンサンを用いたワインで、新しく単一で仕込んだことから、未来をイメージさせるロケットに。右端はゲヴェルツトラミネール。ゲヴェルツトラミネールの代表的な産地アルザス地方のシンボル、コウノトリが描かれている。それぞれにストーリーがあって面白い。

多品種を栽培しているからこそ、ブレンドの面白さが際立つ。特に、domaine tettaでは醸造用ブドウのみならず、生食用ブドウも多く栽培していることもあり、試してみたくなるブレンドが沢山ある。

domaine tettaのインスタアカウントより。写真は2022年のもので、シャインマスカットにナイアガラなどがブレンドされている。2023年はシャインマスカットにシュナン・ブラン、リースリングがブレンドされているようで、こちらも販売が待ち遠しい! domaine tettaのインスタアカウントより。写真は2022年のもので、シャインマスカットにナイアガラなどがブレンドされている。2023年はシャインマスカットにシュナン・ブラン、リースリングがブレンドされているようで、こちらも販売が待ち遠しい!

例えば、生食用のシャインマスカットを用いたワイン。

シャインマスカットの豊かなアロマを活かしつつ、酸が弱いという点を酸味の強いシュナン・ブランやリースリングなどをブレンドすることで、補酸せずにフレッシュな味わいに仕上げることが可能になったそうだ。

シャインマスカット100%のワインよりも味わいや香りに複雑味が増さり、満足行く仕上がりになったそう。

危機感をバネにして

ゼロからスタートしたワイン造り。手応えは感じているが危機感もある。

時にはふりきった挑戦も

日本にワイナリーが増え続ける中、生き残らなければならないという危機感がすごくある。生き残るためにはトップ層に入り続ける必要がある。そのためには、まずは品質と考えた

と菅野さん。
以前の修行先は日本屈指のワイナリーで、そこで体験した遅摘みをdomaine tettaでも活かそうと思ったそうだ。ただ、単に真似するのではなく、極限まで収穫を遅らせ、熟度も極限まで上げて醸造してみることにしたそうだ。標高も高く、昼夜の寒暖差もあり、酸落ちしにくいという嬉しい土地柄から、domaine tettaでは収穫のタイミングはブドウの状態を見極め決める。他の産地より収穫は比較的遅めなのが特徴。そんな中、挑戦に出た菅野さんは2022年、全品種で収穫を後ろ倒しした。例えば、シャルドネは11月前半から収穫を開始。全ての収穫が終わったのが12月30日だったというのだから超遅摘!

「責任者になって3年以内に結果を出さないといけないと思ったし、早く振り切った挑戦をしないとどんどん怖くなると思った」と菅野さんは振り返られたが、全てのブドウがダメになるかもしれないというリスクもある。経営者である高橋さんは冷や汗ものだったのではないかと思うが、「それに、社長も『大丈夫』と背中を押してくれた」菅野さん。くぅぅぅ!痺れる話だ。

出来たワインは全てパワフル。アルコール度数も14-15%まで上がった。醸造の過程で添加物を加えたり、補糖や補酸が不要なことも再確認できたので自信になった。畑の環境とレインカットがあるからこそ可能だったと思う。ただ、これが最終地点でないことも分かり、2023年はバランスを意識した造りに進んでいる

と振り返る菅野さん。勝負するハートの強さと、課題をしっかり認識し次に繋げる冷静さを感じる。

それに対し高橋さんは

日本でここまで色が濃く、アルコール度数も高い、しっかりしたワインはなかなかない。日本でもここまでできるというのを知ってもらういい機会になった

と自信を見せてくれた。

日本に留まらない

挑戦は続く。domaine tettaのワインは海外にも輸出されているのだ。きっかけはアメリカにあるワインインポーターから届いたインスタのDMだった。現在はアメリカのニューヨーク州を始め、ミシガンやテキサス、カリフォルニアといった場所でもdomaine tettaのワインが流通されているのだ。しかも、ダイナーといった場所で地元のご飯と一緒に提供されているそうで、安芸クイーンなどの日本固有品種が人気とのこと。現在はアメリカ以外にもヨーロッパにも卸しているというのだから脱帽する。日本のワインがワインの本場で現地の食と一緒に楽しまれているという光景に、グッとくるものがある。

アメリカでも好評の安芸クイーンを使ったロゼワイン。 ▲ アメリカでも好評の安芸クイーンを使ったロゼワイン。
安芸クイーンを使ったジュースもある。 ▲ 安芸クイーンを使ったジュースもある。

「これも生き残りをかけた戦いの一つ。海外でも受け入れてもらえる味でなければ勝負できない」 と菅野さんが職人肌を見せてくれたと思えば、高橋さんは、
「うちのワインは、確かに醸造過程では人為的なコントロールは最小限だが、ブドウ栽培ではレインカットも用いているし、最低限の農薬も使っているので、ナチュラルワインと一般的なワインの中間に位置するような立ち位置。亜硫酸についても、最小限入れるワインがあったからこそ海外輸出も可能になった。自然に寄り添ったワインを造るという哲学はあるが、理想に縛られ過ぎるとマーケットで生き残れない。ある程度の柔軟性は必要と考えている。」 と経営者としての顔を披露してくれた。

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互いをリスペクトしつつ、それぞれなすべきことを120%で取り組む。そして2人ともチャレンジ精神に溢れている。だからこそ、domaine tetta には「これからも絶対面白いことが起こる!」という期待しかない。

高橋さん、菅野さん、お忙しい中貴重なお時間いただき、ありがとうございました! ▲ 高橋さん、菅野さん、お忙しい中貴重なお時間いただき、ありがとうございました!

Interviewer : 人見  /  Writer : 山本  /  Photographer : 大石悠貴  /  訪問日 : 2024年 7月 11日

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