デゴルジュマンとは?

デゴルジュマン(澱引き。澱抜きとも)とは、端的に言うと瓶口に集められた澱(醗酵の役目を終えた酵母)を取り除く作業を指します。これは主に、シャンパーニュなど瓶内二次発酵を経て造られるスパークリングワインで行う作業です。
2回目の醗酵で、酵母はアルコールと二酸化炭素(炭酸ガス)を一通り生成すると、栄養としての糖分がほぼ無くなった状態で活動を終え、徐々に横に寝かせた瓶の底に「澱:おり」として沈殿していきます。
この澱は最終的に瓶から取り出しますので、取り出しやすいように瓶口に少しずつ移動させます。具体的にはボトルを1日に少しずつ回転させながら(ルミュアージュ:動瓶の意)、瓶口を底よりも少しずつ下げていき、最終的に瓶口に集めていきます。
この間、スパークリングワインは同時に熟成期間に入ります。熟成の期間中、澱(酵母)は瓶口に集められながら、自身は徐々にオートリーゼ(自己分解)し、20種類程度のアミノ酸などになってワインに溶け込んでゆきます。 そうしてワインは旨味を増したり、香りの要素が増え、複雑なニュアンスを携えることで味わいに深みを増してゆくのです。このことは、特に日照量が限られ、酸味が豊かなワインができる産地において、その味わいに奥行きを与えるという意味でもとても大切な工程であるといえます。
スパークリングワインの製法
はじめに醗酵の基礎知識として、甘味(糖分)のあるブドウ果汁を、生き物である酵母と合わせることで、酵母は糖分を代謝(食べる)し、アルコールと二酸化炭素を生成します。この時に炭酸ガスをワインから逃がせばスティルワイン(赤・白・ロゼなど)になり、残せばスパークリングワインになります。
瓶内二次醗酵を行なうスパークリングワインは簡単に言うと、一度目の醗酵でスティルワインを造り、二度目の発酵で炭酸ガスを残して造られているのです。
今回紹介しているデゴルジュマンを含む、瓶内での二次発酵を行なうワインでは、フランスのシャンパーニュやスペインのカヴァ、イタリアのフランチャコルタなどが有名です。
また、炭酸ガスを含むワインを安定的に生産するために古くから試行錯誤を経て確立されたこの手法は、トラディショナル方式(伝統的な方式)とも呼ばれています。
トラディショナル方式の手順を番号付きリストで以下に簡単に紹介します。
1:ベースワインを造る
2:熟成とブレンドで味わいのバランスを整える
3:糖分・酵母を加え瓶詰する
4:瓶内で二回目の発酵をさせる
5:4の工程と並行してワインを熟成させる
6:ルミュアージュ(動瓶)を行い澱を瓶口に集める
7:出荷に合わせて澱引き(デゴルジュマン)を行ない、糖分を含んだリキュールの添加(ドザージュ)を行う
8:コルク打ちをする
ルミュアージュ、デゴルジュマン、ドザージュについてはこのあともう少し解説を加えます。
トラディショナル方式以外のスパークリングワインの製法や、スパークリングワインの製法など、詳細は以下もあわせてご覧ください
ルミュアージュ
横に寝かされた瓶の中から澱を取り出すためには、それを瓶口まで移動させる必要があります。
そこで、デゴルジュマン(澱引き)を行なう前に、ルミュアージュ(動瓶)という工程を挟み、効率よく澱を瓶口に集めていきます。
実際には、ピュピトルと呼ばれる木製の台(板は横から見ると真ん中で折れてへの字になるため、その開き具合で差し込んだボトルの角度を変えることができます)を使って、横に寝かされたボトルを一日当たり約45度(1/8)ずつ回転させながら少しずつ瓶口を下にして倒立させていきます。
現在は多くの生産者で取り入れられている「ジャイロパレット」という機械で一気に作業を進められるのですが、もともとは人の手で1本ずつ手作業で行われていたために大変な重労働で、シャンパーニュ地方では、このルミュアージュを行なう職人さんがワイナリーの労働者の中で最も高い収入を得ていたようです。1日で4万本程動かす人もいたようです。気が遠くなります。
下の画像は日本のワイナリーで導入されているジャイロパレットです。

デゴルジュマン
ルミュアージュによって澱が瓶口に集まったら、澱を取り除く段階に移ります。デゴルジュマンです。 澱を集めた瓶口の部分を-25℃~-27℃程度の塩化カルシウム水溶液に浸し、澱を含む部分を凍結させた後、瓶口を塞いでいた栓(王冠が多い)を外し、瓶内の気圧を使って外に出します。
シャンパーニュでいうと内部はこの時点で6気圧程度ありますので結構勢いよく飛び出します。折角のワインを少しでも無駄にしないように取り出した後は速やかにボトルを正立させます。
一連の作業は近年ではほとんど機械化されていますが、現在でも特別なキュヴェ、またマグナムなど大きいボトルは手作業でこの工程を行なうことがあります。これをア・ラ・ヴォレ(à la volée:空中に飛び出す)という言い方をします。
このデゴルジュマンという工程は、長くボトル内で寝かされていたワインが再び空気に触れる貴重な機会であり、これによって香りの予備軍として待機していた成分を引き出してくれるなど香りや味わいにも大きく貢献してくれますので、こうした造り方をするワインにとってはとても重要な作業と言えます。
ドザージュ
デゴルジュマンで澱を飛ばしたら、今度は糖分を含んだリキュールを加えるドザージュを行います。
デゴルジュマンで減った分を補い、スパークリングワインの味わいの最終的な調整をする目的で行われます。多くはサトウキビ糖、ビーツ糖、MCRなどの糖を、求めるスタイルや味わいのバランスをみながらワインに溶かしており、求める仕上げのスタイルによって糖分量を調整します。
簡単にそれぞれの違いを記すと、
サトウキビ糖は他と比べて比較的粘性がありミネラル豊富、糖自体の甘みやコクが出やすいタイプ。 ビーツ糖はより軽やかでクリアな甘みを表現しやすいと言われています。原料のビーツ(甜菜)は寒さに強いため、シャンパーニュ地方や北海道など冷涼な地域で栽培されていることが多い野菜です。輪作が必要ですので栽培には広い土地も必要です。
MCR(Moût de raisins Concentré Rectifié)はブドウ濃縮果汁のことで、味わいが柔らかく、ワインと同じ原料なので果実味などと相性が良いと言われます。ただ現時点ではコストも高めです。
スパークリングワインはワインに残っている糖分の量によって表記される甘辛度が違います。糖分量と呼称については以下の表をご確認ください。

デゴルジュマンが必要な瓶内二次発酵したワインの特徴
先にも少し触れましたが、瓶内二次発酵では役目を終えた酵母は沈殿し、出荷前までワインとともに眠りにつきます。
この間に酵母が自己分解(オートリーゼ)し、ワイン中に溶け込んでいくことで、ワインの中の分子と相互に作用し、香りや味わいに変化を生み出すことが知られています。
もともと酵母は生物ですので、タンパク質を多く持っています。これが分解されることで20種類程度のアミノ酸としてワインに溶け出し、味わいに深みが出たり、アミノ酸の持っている成分がワイン中の成分と作用することで新たな香りとして発現したりします。
また、面白いことに熟成中、つまり酵母の澱とワインが接触している期間はより還元的な熟成、デゴルジュマンを行った後は並行して酸化熟成が促進されるとされています。熟成のスタイルがデゴルジュマンの前後で変わってしまうイメージです。このことから瓶内二次醗酵を行なうスパークリングワインは「いつデゴルジュマンしたか」がしばしば語られるのです。
バックヴィンテージの蔵出しワインは、移動時のストレス(光、振動、温度変化など)を受けるリスクを最小限に抑えるという意味でワイン好きの方々には好意的に受け入れられることが多いのですが(リコルクなど他にも拘りポイントあり)、瓶内二次醗酵を行なうスパークリングワインについては、それに加えてデゴルジュマンの時期によっても感じられる熟成度合いにかなり違いが感じられます。
同じ銘柄のスパークリングワインを比べた時、デゴルジュマンの時期が最近であればあるほど、熟成年数に対して若々しさを保っていることが多いです。
瓶内二次発酵で造られるワインに合う料理
瓶内二次発酵で造られるワインで有名なのはフランスのシャンパンやクレマン、スペインのカヴァ、イタリアのフランチャコルタなどがあげられます。
よりフレッシュな酸味があるクリアで若々しいスパークリングワインには 新鮮な食材を活かしたお料理。白身魚のカルパッチョや貝類、春夏に美味しい野菜料理などもお勧めです。
木樽の風味がしっかり感じられたり、熟成感の出ている味わい深いスパークリングワインには優しく火入れした魚介類や肉料理。ヒラメなど白身魚のムニエルや、チキンや仔牛のクリーム煮などでしょうか。そこに秋冬に美味しいキノコ類を、仄かに利かせたニンニクを隠し味に さっと炒めて付け合わせにしても美味しいでしょう。
デゴルジュマンが必要な瓶内二次発酵したおすすめのワイン5選
瓶内二次発酵を行うワインのなかで、おすすめワイン5選をこのあと紹介いたします。
オリオル・ロッセール キュヴェ・エスペシアル NV

こちらはスペインのカヴァで日本市場専用に造られるスパークリングワインです。
小規模なワイナリーで、手作業でのルミアージュ(動瓶)、注文を受けてからデゴルジュマンを行うなどこだわりが随所に光ります。それでいて価格も抑え目なので瓶内二次醗酵のワインを試してみたい方にはおすすめの1本です。
-
スパークリングワイン
オリオル・ロッセール キュヴェ・エスペシアル NV
スパークリングワインスペイン/ペネデス通常価格1,650 円 (税込)通常価格単価 あたり残り4個
シャレロ他 シャレロ他
日本市場専用オリジナル・スパークリングワイン
アンリオ ブリュット・スーヴェラン NV

200年の歴史をもつ家族経営のシャンパーニュメゾン。スーヴェランはスタンダードキュヴェになります。
白い花やブリオッシュなどを思わせる品の良い香りに、しっかりとしたミネラルに支えられた美しくクリーミーな風味が特長です。
-
スタッフ
おすすめスタッフ
おすすめスパークリングワインアンリオ ブリュット・スーヴェラン NV(化粧箱入り)
スパークリングワインフランス/シャンパーニュ通常価格8,360 円 (税込)通常価格単価 あたり残り10個
シャルドネ他 シャルドネ他
特筆すべき複雑味と骨格を持つシャンパーニュ
ローラン・ペリエ ラ・キュヴェ NV

世界トップクラスの規模を持つシャンパーニュメゾンです。
厳選したブドウの一番搾り果汁のみを使用し、規定より遥かに長い48ヶ月もの熟成を経てリリースされます。
「フレッシュ」「エレガント」「バランスの良さ」というメゾンのスタイルを実現しており、スタンダードキュヴェとしてはワンランク上の味わいです。
-
スパークリングワイン
ローラン・ペリエ ラ・キュヴェ NV(箱なし) *
スパークリングワインフランス/シャンパーニュ通常価格8,833 円 (税込)通常価格単価 あたり残り3個
シャルドネ他 シャルドネ他
ローラン・ペリエ社のスタイル「フレッシュさ」「エレガントさ」「バランスの良さ」を表現したスタンダード・キュヴェ
ヴーヴ・クリコ リッチ・オン・アイス NV

ヴーヴ・クリコといえば黄色のラベルを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
こちらは甘口タイプのシャンパーニュでその名の通り、氷をグラスに入れて飲むことをおすすめしています。フルーティーで上品な甘さなのでワインが苦手な方にも飲んでいただきたい1本です。
-
白ワイン、スパークリングワイン
ヴーヴ・クリコ リッチ・オン・アイス NV
白ワイン、スパークリングワインフランス/シャンパーニュ通常価格10,175 円 (税込)通常価格単価 あたり残り24個
ピノ・ノワール他 ピノ・ノワール他
氷を入れて、太陽を感じながら楽しむ
ペリエ・ジュエ ベル・エポック 2014

いち早く辛口タイプのシャンパーニュを手掛けたメゾンとして知られるペリエ・ジュエ。ベル・エポックはペリエ・ジュエを象徴するフラッグシップキュヴェです。
グラン・クリュの畑で採れた高品質なブドウを中心に使用し、繊細かつ複雑な味わいが広がります。
アネモネが描かれたボトルの華やかから贈り物としてもおすすめです。
まとめ
デゴルジュマンはスパークリングワインを造る瓶内二次発酵で必要な作業のことを指し、内部に溜まった澱を瓶口に移動させ、少量のワインと共に凍結して取り出す作業をデゴルジュマンと呼びます。
瓶内二次発酵で造られるワインはシャンパンやカヴァ、フランチャコルタなどがあげられます。シャンパンやカヴァなどを飲み比べてみたい方はTHE CELLAR online storeをご覧ください。