
1. タン・エルミタージュ村の概要
タン・エルミタージュ村
ローヌ河左岸の3つのコミューンに広がる、「エルミタージュ」のアペラシオンは、全部で約140ヘクタール程しかない。この小さなアペラシオンの中に、ポール・ジャヴレ、シャプティエ、シャーヴ、デュラスの4社が全体の60%弱の畑を所有。
基本的に造られる赤ワインはシラー、白ワインはマルサンヌ、ルーサンヌを使用した、長期熟成型のワインとなる。
エルミタージュの丘の麓にある、タン・エルミタージュ村は人口6千人程の、コート・ド・ニュイの最大都市である、ニュイ・サン・ジョルジュ村と同程度の規模。町にはフランスの国鉄SNCFのタン・エルミタージュ駅があり、ホームを降りると直ぐに真上を見上げればエルミタージュの丘が見える。ちなみに日本でも人気のヴァローナの本社もこの村にある。



2. ワイナリーの歴史
ポール・ジャヴレ・エネ
1834年アントワーヌ・ジャヴレによりタン・レルミタージュのエルミタージュの丘に設立されたポール・ジャヴレ・エネ。ローヌ渓谷北部の最も有名なテロワールを集めてコルナスからコート・ロティまで105ヘクタールのブドウ畑を所有している。
1919年にはエルミタージュの丘の中腹にあるサン・クリストフ礼拝堂(ラ・シャペル)を取得。この教会は「エルミタージュ・ラ・シャペル」と名乗る事が許されている。


2006年にキャロリーヌ・フレイがメゾンの経営を引き継ぎ、有機栽培とバイオダイナミック農法への移行を開始。2016年にはビオロジックの認証を取得。
2023年には「ドメーヌ・ド・ラ・シャペル」を設立。今後ラ・シャペルとシュヴァリエ・ド・ステランベールの2つは、「ドメーヌ・ド・ラ・シャペル」の名称のもと、リリースされることになった。
3. 畑の特徴
2006年に現在のオーナーであるフレイ家のカロリーヌ・フレイ女史が醸造責任者となり、有機栽培への移行を開始した。その後2016年にはビオロジックの認証を取得、また同年にビオディナミ農法への移行も始める。2021年には完全に畑をビオディナミ農法で管理するようになる。

<以下HPより抜粋>
「 ブドウ栽培は自然と対峙するものではなく、自然を補完するものでなければなりません。私たちの再生哲学は、ブドウの木の性質を理解し、それを環境と結びつけることにあります。」
さらに畑だけの管理に留まらず、品質管理マネジメントに関する国際基準であるISO9001と環境マネジメントに関するISO14001のいずれも2001年にワイナリーとして取得しており、環境保全に対する姿勢は積極的に行っているようだ。


4. 醸造の特徴
クローズ・エルミタージュ・ブラン 2021年
7haの粘土質土壌の畑でマルサンヌ50%、ルーサンヌ50%のブレンド。ラベルの真ん中にはこの畑の象徴であるロバのデザインが。全て自社畑のブドウのみを使用。
「発酵は全てコンクリートタンクを使用、ステンレスタンクは使用しておらず、伝統的な造り方をしています。(最終ブレンドの時のみ、ステンレスタンクを使用。)熟成は新樽を10%のみ使用。2009年からステンレスタンクの使用を止めて、現在の醸造方法に変更しており、コンクリートタンクは12~14があり、それとは別に2つ容量の小さい槽もあります。例えばコンドリューなどは生産量が少ないので、小さな槽を使用して醸造します。」クローズ・エルミタージュというと、品種由来の華やかな香りを想像して、少々もったりとした果実味みたいなイメージで試飲をしましたが、見事にそのイメージを良い意味で裏切る、非常にエレガントなワインでした。酸と果実味のバランスが非常に良い!




エルミタージュ・ブラン・シュヴァリエ・ド・ステランベール 2020年
「4haの自社畑で、3/2はマルサンヌ、残り3/1がルーサンヌです。ポール・ジャヴレで唯一造るエルミタージュの白で、歴史的な畑です。2021年以降は赤のラ・シャペルとこのシュヴァリエ・ド・ステランベールのみ他のワインと明確に区切る為にドメーヌの名称を「ドメーヌ・ド・ラ・シャペル」に変更しました。」醸造・熟成については75%をエッグ型のコンクリートタンクで、残りをフレンチオークで行う事によりフレッシュさと複雑さのバランスをとっているとの事。この前に試飲していたのがクローズ・エルミタージュだった事もあり、一気に味わいはグラン・クリュのようなヴォリューム感に。ジャスミンや火打ち石の香り、味わいはミネラル感に柑橘系の果実味の味わい。
コンドリュー・レ・グラン・ザマンディエ 2020年
「100%ヴィオニエで、非常に生産量が少ないワインで、毎年造れるわけではありません。2ha強の畑です。畑は5-6年前に植えたプロットです。ヴィオニエは私たちの主要ブドウ品種ではないので、少しずつ植え替えをしています。私たちが造るヴィオニエはバタリーで果実味が豊かなタイプを目指していなく、常に酸がしっかりとあり筋の通った味わいを目指しています。」こちらも醸造・熟成はエッグ型のコンクリートタンクに、600リットルの中樽を使用。グラン・アマンディエのブドウ畑は、フランス語で 「アマンディエ 」と呼ばれる雄大なアーモンドの木に囲まれているので、この名称になったそう。このコンドリュー、説明にもあったように、バタリーでも果実味がふくよかな味わいでもなく、とにかく重心の低い味わいでビックリ。本当に酸が綺麗で、ポール・ジャヴレの目指す、フィネスのあるエレガントなワインの形をまさによく理解出来るワインでした。

クローズ・エルミタージュ ドメーヌ・ド・タラベール・ルージュ 2018年
「これは私たちにとって非常に歴史的なキュヴェです。1843年にポール・ジャヴレがドメーヌを始めた際に、弟の所を訪れて購入したのがこのドメーヌ・タラベールで、1か所で40ヘクタールある大きな畑です。全てヴィエ―ュ・ヴィーニュで、平均40-60年位の樹齢です。それゆえにワインは複雑味を感じますよね、品種は100%シラーです。自社畑のブドウは全て手収穫され、選果台を使い選果した後、100%除梗します。その後、ステンレスタンクにグラヴィティフローで移動し、3~4週間の発酵を経て熟成は新樽が20%程度を使用していましたが、21年から更にこの新樽比率を15%~10%程度までに下げています。(新樽の使用比率を下げようとしています。)」こちらはクローズ・エルミタージュらしく、黒系果実の香り、シラーらしい骨格のある味わい。ヴィンテージが2018年と少し前だった事もあり、味わいのバランスが整っていた。


コート・ロティ レ・ピエレル 2020
「この畑は南側のコート・ブロンドという場所にあり、花崗岩と石灰岩の土壌です。その為シラーでもフレッシュでミネラル感が強く出る為、シラー100%で造っています。ヴィオニエをブレンドしなくても十分に酸が出るので。一般的には北側にあるコート・ブリュンという場所から造られるシラーは非常にタンニンが強く出る為、酸やフローラルな香りを足し、エレガントなワインにする為にヴィオニエをブレンドしますね。ただ私たちのコート・ロティは力強いですが、既にタンニンはシルキーです。未だ若いですが非常に面白いですよね。」このコート・ロティは未だ2020年と大変若いのですが、本当にタンニンが滑らかで口の中で程よく広がる。十分にエレガントでしかも酸もしっかりとある味わい。これが長期熟成を経るとまた味わいのステージが変わるのだろうけど、今でも十分に楽しめます。
エルミタージュ ラ・メゾン・ブルー 2017年
「エルミタージュには21ヘクタールのシラーの畑があります。この21haの畑は様々な方角と土壌と、異なる日照条件にあり、常に最終的にブレンドしてワインを造ります。ラ・シャペルに使うプロットは3~4つですね。また2001年にエルミタージュの畑を買い、それ以降畑を購入する事を止めました。」2001年からラ・シャペルとは別に「ラ・プティット・シャペル」という、所謂セカンドワインのようなキュヴェをスタートしたようで、それが2015年からこのラ・メゾン・ブルーに名称変更になったそうだ。
「ラ・シャペルはより力強いタンニンを持っていて、複雑味があり、15年~20年熟成するワインです。一方でメゾン・ブルンは果実味があって、4~5年で飲めるようなワインです。この2つのワインはどちらもブレンドで出来ていますが、この年のブレンドは80%が同じです。残りの20%でラ・シャペルはより複雑な味わいで長期熟成型のワインに、メゾン・ブルンはより果実味が出て、より早く飲めるワインになるように畑のプロットを選びます。」なるほど、シラーの持つタンニンや甘さがもう既に滑らかに感じられ、複雑味もある。これはトップキュヴェのラ・シャペルとはまた異なる魅力があるワインだ。
23年度からドメーヌ・ド・ラ・シャペルとして再スタートした後のワインの出来も非常に楽しみだ。(但し気がかりな情報も。本来なら新しいワイナリーが完成しているはずだったのだが、工期がかなり遅れているようで、皆さまにお目見えするのは25年~26年と未だ少し先になるようである。)

5. (おまけ)音楽祭で町中大騒ぎ!
今回の訪問はブルゴーニュより車で移動して、タン・エルミタージュ村の宿泊先ホテルに到着したのが21時過ぎ。悲劇はこれからで、宿泊先のレストランを予約していたのだが、ラストオーダーの時間が過ぎており、キッチンをもう閉めた、と言われなんと夕食難民となってしまう。仕方なく、夜のタン・エルミタージュ村を散策する事にしたら、なんと当日は村中の至る所で音楽祭が!子供から大人まで音楽を楽しみ、食事やワインを楽しむ人達でレストランやバーがどこも大盛況!私たちは地元のワイン輸入業者が営むバールのような所で無事、食事とワインを楽しむ事が出来ました。


参考情報:
生産者 - ポール・ジャヴレ・エネ:Domaines Paul Jaboulet Aîné - Rhône Valley Fine Wines
輸入元 - モトックス:ドメーヌ・ポール・ジャブレ・エネ|Winery(ワイナリーをご紹介)|生産者を知る|モトックス
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