
1. シャトー・アンジェリュスの概要
ボルドーのサン・テミリオン地区に長い歴史を持つド・ブアール・ド・ラフォレ家が所有で、右岸を代表するシャトーの1つ。1985年にユベール・ド・ブアール・ド・ラフォレ氏が事業を引き継ぐと、1988年に名称を「シャトー・アンジェリュス」に変更し、栽培・醸造に至るまで様々な改革に着手。
1996年にはサン・テミリオン格付けの第1級特別級Bに昇格を果たし、その後2012年には念願であった(当時の格付けでシャトー・オーゾンヌやシュヴァル・ブランと同位となる)第1級特別級Aに昇格を果たし、スターダムに名声を得ていった。


2012年にはユベール氏の娘で、ド・ブアール家8代目となるステファニー女史がシャトーの代表に就任。2013年にはサン・テミリオン地区にある老舗レストランの1つである「ロジ・ド・ラ・カデーヌ」を買収、その後ガストロノミー分野にも力を入れて事業展開している。
2022年のサン・テミリオン地区の格付けの際には、シャトー・オーゾンヌ、シャトー・シュヴァル・ブランと同様に、(第1特別級Aへの)申請を行っておらず、現在は格付けリストから姿を消している。
現在シャトー・アンジェリュスが生産するワインは以下の4つがある
・シャトー・アンジェリュス
・シャトー・アンジェリュス・オマージュ・エリザベス・ブシェ(2016年初リリース、2016カベルネ・フランの良年度のみ生産。)
・ル・カリヨン・ダンジェリュス(1987年より生産)
・ヌメル・トロワ・ダンジェリュス(2007年より生産)


2. ワイナリーの歴史
シャトー・アンジェリュスを所有しているド・ブアール家の家系図を遡ると、なんと1544年になる。1920年にモーリス・ド・ブアール・ド・ラフォレ氏が3ヘクタールのクロ・ランジェリュスを取得し、シャトーが誕生した。
ボルドー大学で「現代ワイン醸造学の父」とも言われるエミール・ペイノー博士のもとで学んだ第7代目となるユベール・ド・ブアール・ド・ラフォレ氏が1985年からシャトーの代表に着任。1988年にそれまでの呼称であった「シャトー・ランジェリュス」から現在の「シャトー・アンジェリュス」へ変更した。
その後は栽培や醸造に於いても改革を進める一方で、2006年にはハリウッド映画の「007」にシャトー・アンジェリュスを登場させ、中国向けの輸出事業で成功を収めるなどマーケティング分野でもその力を発揮。


2012年にはブアール氏の娘であるステファニー・ド・ブアール=リヴォアル女史がシャトーの代表に就任する。同年9月にサン・テミリオン地区格付け第1特別級Aに昇格を果たす。2014年にはジャン=ピエール・エラートとアルノー・ブーランの設計によるシャトーの大改修プロジェクトが完了した。現在セラーの改修工事を行っており、当初2024年度に完成予定だったが、現在工期が遅れており2025年に向けての完成が待たれる。
2022年のサン・テミリオン地区格付け改定に於いて、2012年度の昇格を果たした際に、ユベール氏に利益相反があったとして罰金の支払いを下す裁定が出た事を不服として、それに抗議をする形で、申請を行わずに、同地区の格付けリストから名前が消える事となった。
3. 畑の特徴
グラン・ヴァン向けの畑は全部で32ヘクタールを所有。作付け面積はメルロが53%、カベルネ・フランが46%、プティ・ヴェルドが1%。畑は全部で30区画以上に分かれている。3種類の異なる土壌からなり、石灰岩を含む粘土質、砂と石灰岩を含む粘土質のテロワールで、傾斜のある丘陵地に位置している。斜面の下部には、粘土を含む砂がある。
平均樹齢は約39年だが、樹齢60年以上のヴィエ―ニュ・ヴィーニュのカベルネ・フランの区画があり、良年度のみに「オマージュ・エリザベス・ブシェ」としてリリースをされている。2003年から試験的に醸造が始まり、初リリースとなったのは2016年。
畑は2018年より有機栽培に転換をしており、2021年から認証を取得している。




4. 醸造の特徴
低温マセラシオンをおこなった後、温度管理されたオーク桶、ステンレスタンク、コンクリート・タンクの組み合わせでアルコール発酵を行う。ステンレスタンクはメルロとカベルネ・フランの両方に、オーク樽はメルロにコンクリート・タンクはカベルネ・フランに多く使用する。セラー内は全てグラヴィティ・フロー。マロラクティック発酵はフレンチオークの新樽で行われている。熟成は100%新樽にて18ヵ月から24か月間。樽からの影響を少なくする為、2018年から3000リットルのフードルも併用しており、現在はカベルネ・フランを1年間熟成させている。
現在のセラールームの天井は鐘の音の波形をイメージした、丸みを帯びたデザインが施されている。




5. 2014年のシャトー・アンジェリュスのテイスティング
「グラン・ミレジム(大いなる収穫年)となったこの年は、気難しい春に始まり、不安に満ちた夏が続いた。やがて黄金に光り輝く、暑くて素晴らしい10月の到来。メルロの古樹の収穫を数日ほど延期し、カベルネ・フランが完熟するまでもう少し待つことになった。」<HPから抜粋>
テイスティングは2016年のカリヨンと2014年のアンジェリュス。セカンド・ワインとしてリリースされている、カリヨンとアンジェリュスは基本的に使用しているブドウの区画が基本的に全く異なる為、別のワインと考えた方が良いだろう。(カリヨンを)醸造している場所も2019年にサン・テミリオンから10キロ程離れた所にあるサン・マーニュ・ド・カスティヨン村に建設した新ワイナリーで行っている。
カリヨンは赤い果実の香りが出ていて、華やかでタンニンも滑らかだ。今飲んでも楽しめるワインに仕上がっている。2016年は現当主のステファニー女史の実質的に指揮を取った最初のヴィンテージとの事。




一方でシャトー・アンジェリュスの2014年はやはり重厚だ、色味も未だ縁がほんの少しだけオレンジ色になった程度で非常に若い。香りも熟成から来るニュアンスも出ているし、未だスパイシーで且つブラックベリーやコンフィチュールのようなよく熟した年の特徴が出ている。味わいは丸みをおびたタンニンの後に、非常に長い余韻とミントのニュアンスがある。香りや味わいの要素がカリヨンと比較すると2層も3層も多いように感じる。
この2014年ヴィンテージは普段と少しデザインが異なり、ユベール氏がワインメーカーを始めて30年目を祝う黒色の帯がついている。またこの年からRFIDタグを導入してWIDアプリを通した流通経路の管理を始めた。(アプリをDLして立ち上げて、ラベルのRFIDタグを読み込みすると、流通経路の場所が表示される仕組み。)
Special thanks to TEAM Riedel France
参考情報:
生産者 - シャトー・アンジェリュス:The Angélus homepage
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