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Domaine Jacques Prieur

Domaine Jacques Prieur

ドメーヌ・ジャック・プリウール
ドメーヌ・ジャック・プリウール

ドメーヌ・ジャック・プリウール - 名だたるグランクリュを持つ、古きよきヴィニュロン

2025.01.06
シャトー・ムートン・ロートシルトの概要

名だたるグランクリュを持つ、古きよきヴィニュロン

2024.06.21 --- writer Kasahara

web サイト
https://www.prieur.com/en/

1. ムルソー村の概要

ムルソー村

コート・ド・ニュイの赤だとヴォーヌ・ロマネとジュヴレ・シャンベルタンが人気の双璧であり、味わいの比較も良くされるように、コート・ド・ボーヌの人気産地としてシャサーニュ・モンラッシェ、ピュリニー・モンラッシェとともに名前が挙がるのがムルソーだろう。
畑の面積も約400ヘクタール以上あり、ジュヴレ・シャンベルタン同様、流通している数も多い事が知名度を上げている1つの要因かもしれない。
グラン・クリュの畑はないものの、1級畑は全体の約25%程度にあたる100ヘクタールあり、ぺリエール、グッドドール、ジュヌヴリエール等人気な畑も多い。また同時に有名な人気生産者も多くこの村に本拠地を構えている。
ムルソー村の古くは多くのネゴシアンが立派な家を構えたという歴史さながら、ドメーヌ・ジャック・プリウールは立派な建物を構える19世紀から続く造り手だ。

ドメーヌ・ジャック・プリウール ▲ 2年前に中を改装して綺麗になった、醸造所
ドメーヌ・ジャック・プリウール ▲ 現在はドメーヌのオフィスとして活用されている建物

2. ワイナリーの歴史

ジャック・プリウール

ワイナリーの歴史は1868年にクロード・デュヴェルジーとマリー・タブローが結婚した所から始まる。クロードは結婚後、デュヴェルジー・タブロー・メゾンを設立し、ワインとスピリッツの取引で成功を収めた。その後1879年にドメーヌ・ジャック・プリウールの中心地であるムルソーに 「レ・エルブー 」の土地を取得し、ブドウ畑の購入。その後夫婦には子供がおらず、跡継ぎが居なかった為、マリーの姪であるエレーヌ・タブローが相続。エレーヌはその後ボーヌ生まれのアンリ・プリウールと結婚した。1893年にこの夫婦の間に生まれた息子が、ドメーヌの名前となっている、ジャック・プリウールだ。その後1935年に母エレーヌ・タブローが無くなると、ジャック・プリウールがドメーヌを相続。1956年にドメーヌの名称をジャック・プリウールとする。彼の死後、6人の子供が相続。
現在はラブリュイエール家のエドゥアルド・ラブリュイエール氏が、プリウール家の子孫でジャック・プリウールの孫となるマルタン・プリウール氏と協同してドメーヌの運営にあたっている。
ちなみにラブリュイエール家はポムロールのシャトー・ルージョ、シャンパーニュにはJMラブリュイエール、ムーラン・ナヴァンにもドメーヌを所有。

▲ 「晴れたブルゴーニュへようこそ」と陽気な挨拶とともに現れたマルタン・プリウール氏

3. 畑の特徴

現在ドメーヌとしては21ヘクタールの畑を所有。その他ネゴシアンとしてもワインを造っており、こちらは生産量としては約10ヘクタール分程度あるとの事。畑はムルソーからジュヴレ・シャンベルタンまである。
所有する畑のうち、約1/3はグラン・クリュが占めており、それもコート・ド・ニュイからミュジニー、エシェゾー、クロ・ヴージョ、シャンベルタン、そしてコート・ド・ボーヌからコルトン・ブレッサンド、モンラッシェ、シュヴァリエ・モンラッシェ、コルトン・シャルルマーニュと早々たるラインナップ。

▲ クロ・ド・ヴージョのジャック・プリウールの畑、隣にジャン・ラフェの畑が隣接している。

モンラッシェは平均樹齢約75年というヴィエ―ニュ・ヴィーニュの区画のものと、平均樹齢37年の区画と別々にリリースをしている。
栽培責任者は1997年より、アルザスのツィント・ウンブレヒトなどで12年間の研鑽を積んできたダニエル・ゴドフロワ氏が担当。畑の管理は基本的にリュット・レゾネで、農薬等の散布は必要最低限のみで行っていたが、2019年よりラブリュイエール家のエドゥアルド氏の意向のもと、現在ビオロジックへの転換を進めている。

4. 醸造の特徴

ピノ・ノワールは100%除梗が原則だが、ヴィンテージや区画によっては全房発酵を行う場合もあるようだ。

「いくつかのアペラシオンや、暖かい年でアルコール度数が高くなってしまった時には、例えば30%程全房発酵をしてワインをよりフレッシュでスパイシーな感じに仕上げる事もありますよ。粘土質土壌のテロワールも時々粗野な味わいになる事もあるので、全房発酵にする事によって味わいが少しフレンドリーに出来ます。」
と全房発酵を使う目的を話す、マルタン氏。やはり全ては収穫されたブドウの状態を見ながら、判断するという事なのだろう。
▲ 2024年の出番はこれから、準備はもう出来ている様子
▲ シャルドネに使用している大きな甕、ボンバーマンを彷彿とさせるシルエットだ。

マセラシオンは温度管理された開放式木桶で平均20日間。その後アルコール発酵中は、通常1日に2回の澱引きを行う。マロラクティック発酵は100%実施。

「外が非常に寒い時にはタンク内の温度を少し上げます。私が言う温度帯とは12.5℃くらい。そうするとタンニン成分がポリマリゼーション(化合物結合)によりなめらかになるのです、興味深いですよね。」
コントロールする温度帯が0.5単位で説明している事を考えると、やはり細かく状況を見て醸造を進めている事がうかがい知れる。
「シャルドネは全房の状態でここに持ってきてコンベアに載せて空気圧式圧搾機で圧搾プレスされます。このレセプション(収穫時にブドウを受け入れする場所)の問題は日中(11時~12時頃)暑くなり過ぎる事、その時はこのプレス機を建物内に収納して作業を続けます。このプレス機はシャンパーニュでよく使われている水平式のものです。この大きな甕はシャルドネにのみ使用します。」
と説明を続ける。
ちなみに1990年より醸造に関わっているナディーヌ・ギュブラン女史が2009年より技術責任者を務めている。仏専門誌“レヴュー・ド・ヴァン・ド・フランス”で1998年に女性で初めてベストワインメーカー・オブ・ザ・イヤーに輝いた実力者。

5. 2022年タンク・サンプル・テイスティング

「このタンクに入っているワインは再来週にはボトリング予定です。シャサーニュ・モンラッシェ モルジョ(赤)から試飲しましょうか。こちらはネゴスものです。2022年のヴィンテージのコート・ド・ボーヌのピノ・ノワールは完熟してとても凝縮した良い年でした。コート・ド・ニュイも雨が少なかったので、はっきりとした味わいになっています。モルジョは18年から造っています。樹齢は47年とか、非常に古い区画です。いつも非常に綺麗な酸を感じるワインです。」
さて、まさに瓶詰め待ちの2022年ヴィンテージのテイスティングが始まった。このシャサーニュは、確かに野暮ったさもなく、綺麗な酸を持っている。2022年のヴィンテージの良さが果実味によく表現されている。

クロ・ヴージョ

「クロ・ヴージョです。ご存じの通りクロ・ヴージョは非常に広い畑です。私たちの区画はシャトー(お城)の麓にある区画になります。丁度シャトー・クロ・ヴージョのクリュの下側にあたります。粘土質からくる味わいはかなり硬質な印象ですが、親しみやすく、タンニンも強く感じ、少しスパイシーさもありますね。」

シャンベルタン

「次はシャンベルタンですね、色は更に深い、黒紫色ですが、非常に繊細です。この区画は非常に古いです75、76年位でしょうか。特にクロ・ヴージョの後に試飲すると、この繊細さが分かりますね、フローラルな香りもあり、余韻は更に長く、綺麗な酸があります。やはり22年は非常に良い年でしたね、赤も白も。」
前のクロ・ド・ヴージョと対比すると不思議な位に様々な香り、味わいの要素が今でもしっかりと感じられ、複雑味と余韻はやはりグラン・クリュの中でも特別な畑なのだ、と理解するには十分だった。

ミュジニー

「次はミュジニーです。これは元々1か月前にボトリング予定でした。ただタンニン分が未だ粗々しかったのですが、ようやく調和が取れてきました。これでボトリングして熟成させれば、問題ないですね。現時点でもいかにもグラン・クリュだ、と分かるくらい鮮やかです。」
これまたシャンベルタン同様、圧倒的なスケール。そして艶やかな味わい。シャンベルタンよりも味わいの骨格が太い印象で、その分このスケール感となっているのかもしれない。

コルトン・シャルルマーニュ

「次は白ですね、コルトン・シャルルマーニュです。これは非常にタイトでミネラルを感じるワインです。50%は新樽を使用しています。エルダーフラワーや石灰を感じるチョークの香もしますね。非常に良いバランスですが、未だ閉じていますね。」
白い花の甘い香りが、漂い、石っぽいニュアンスが出ていて、口に含むとやはり説明にもあった通り、タイトなミネラルが口の中一杯に広がる。もちろんどのグラン・クリュにも時間(熟成)は必要だが、本領発揮となるにはこのワインは未だ未だ時間が必要のようだ。

シュヴァリエ・モンラッシェ

「次はシュヴァリエ・モンラッシェです。本当に数が少ないキュヴェですね。非常に豊かな果実味を感じるワイン。そして華やかな香りですね。」
ジャック・プリウールの所有するグラン・クリュの畑の中でも最も生産量の少ない、同キュヴェ。コルトン・シャルルマーニュ同様に火打ち石っぽい香りに甘さやスパイスも同居している。味わいはやはり荘厳で、口の中果実味がじわじわと広がっていく。

ル・モンラッシェ

「次はル・モンラッシェです。実はモンラッシェは2種類あるのです。こちらはクラシックなモンラッシェで、樹齢は37年位、もう一つのVVは75年位の古木から造られます。非常に豊かな果実味を持っています。このモンラッシェVVわずか2樽分しかありません。フローラルで華やかな香りで、更に果実味が強くあり、タンニンを感じる位ヴォリュームがあり、ほとんど赤ワインですね。まったく異なるワインです。
ここ数年は分けて醸造していますが、それ以前は量が少ない事もあり、混ぜてブレンドして造っていました。」
まったく異なるワイン、という前置きさながら、香りからこの2種類は本当に違う。通常のモンラッシェには白い花系の優しい香りの広がりに対して、ヴィエイユ・ヴィーニュはもっと熟した果実味の香りが一気に広がり、非常に華やか。味わいについては印象が逆になり、ヴィエイユ・ヴィーニュの味わいの方が硬いミネラルと果実味。通常のモンラッシェは果実味が開いており、甘さにスパイス等の要素も感じられる。
▲ 瓶詰待ちのタンク内サンプル、タンクの容量を見るだけで生産量規模をおおよそ理解出来る

6. 締め括りは2022年のボトルから

3種類ある、ボーヌの赤ワインをテイスティング・ルームに移動して試飲。同じアペラシオンで畑名が色々とあると「どれが、何?どんな味?」と必ずなりますよね。でもご安心あれ、ドメーヌの3つのボーヌの赤ワインは下記の通りのプロファイルと一緒に説明頂きました。ちなみに今回比較したのは1.ボーヌ・クロ・ド・ラ・フェギーヌ、2,ボーヌ・グレーヴ、3,ボーヌ・シャンピモン、の3つ。まず、

1.クロ・ド・ラ・フェギーヌ

「フレンドリーで果実味もあり、飲みやすいタイプの味わい」

2. ボーヌ・グレーヴ

「フレッシュなタンニンが特徴で、食事とも合わせやすい味わい」

3.シャンピモン

「粘土質土壌で造られているワインなので、より硬質なタンニンがあります。食事と合わせたいワイン」
ちなみにそれぞれの畑で白も造っています。今回白はシャンピモンのみ試飲。
「シャンピモンは山のふもとという意味です。(赤・白の畑を足すと)約3.5ヘクタールある広い畑で下にあたる2/3はピノ・ノワールが植えてあります。シャルドネが植えてある上部は石灰質土壌になっています。少しコルトン・シャルルマーニュのニュアンスに似ていますよね、石灰っぽい香りとミネラル質があるので。力強さもあります。」

クロ・デ・サントノ

この次はクロ・デ・サントノを試飲、非常に甘いコンフィチュールな香りと濃い色調で少しスパイスも感じる味わい。以前にはヴォルネー・サントノもリリースしていたそうですが、それはクロ・デ・サントノの畑の若木を使用していたとの事。今は樹齢が25年となり、全てクロ・デ・サントノとして発売しているそう。

コルトン・ブレッサンド

「コルトン・ブレッサンド、これは同じく粘土質の土壌です。20-30%程全房発酵しています。本当はもう少し全房を残す事が出来るといいのですが。タンニンに甘味があり、ミントやスパイスの香もあり、クロ・デ・サントノよりもバランスが良い印象です。」
▲ 地下のセラールームの横にあるテイスティング・ルーム。
▲ 1階にもテイスティング・ルームがあるが、こちらは未だ建設中!
▲ テイスティング・ルームから見える収穫時に収穫人が寝泊まり出来る部屋がある建物

終始、楽しそうにワインの説明をしてくれたマルタン・プリウールさん、その陽気な性格はジャングル・クルーズの添乗員かのように、私たちを最後まで楽しませてくれた。日本に来日した時は今日もてなししてくれたように、今度は私たちがおもてなしをしないといけないな、そう強く思わせる、古き良きブルギニヨンとの出会いに感謝…。

参考情報:
生産者 - ドメーヌ・ジャック・プリウール:The Great Terroirs of Burgundy - Jacques Prieur
輸入元 - ジェロボーム:Domaine_Jacques_Prieur

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