ミュスカデはロワールを代表する白ブドウ品種!
ミュスカデはロワールを代表する白ブドウ品種!

相性の良い料理やおすすめワインも紹介

相性の良い料理やおすすめワインも紹介

THE CELLAR JOURNAL --- writer : Tomohiro TAKAMARU

ロワール地方を中心に栽培されている白ブドウ品種、ミュスカデ。またの名をムロン・ド・ブルゴーニュと付くようにブルゴーニュ地方が原産地です。
多くはシュール・リー製法と呼ばれる醸造方法を用いられ、柑橘系の爽やかさとしっかりとした酸が特徴です。価格も手ごろなため普段飲みに取り入れやすいことや食中酒として幅広く料理と合わせられることから人気があります。

本記事ではミュスカデの特徴や産地、相性の良い料理、おすすめワインもご紹介しますのでぜひご覧ください。
ロワール地方を中心に栽培されている白ブドウ品種、ミュスカデ。またの名をムロン・ド・ブルゴーニュと付くようにブルゴーニュ地方が原産地です。
多くはシュール・リー製法と呼ばれる醸造方法を用いられ、柑橘系の爽やかさとしっかりとした酸が特徴です。価格も手ごろなため普段飲みに取り入れやすいことや食中酒として幅広く料理と合わせられることから人気があります。

本記事ではミュスカデの特徴や産地、相性の良い料理、おすすめワインもご紹介しますのでぜひご覧ください。

ミュスカデはロワールを代表する白ブドウ品種!相性の良い料理やおすすめワインも紹介

相性の良い料理やおすすめワインも紹介
2024.11.13

1. ミュスカデとは?

ミュスカデとは?

ミュスカデはかつて「ムロン・ド・ブルゴーニュ」の名で知られていたブルゴーニュ地方発祥のブドウ品種です。(ムロンとは果物のメロンを指します。)
1635年頃に修道院によりペイ・ナンテ地区に持ち込まれた歴史が残されおり、1709年の大寒波でロワール地方のブドウが全滅した事から耐寒性が高いミュスカデの栽培が広まりました。その結果、現在では90%がロワール地方で栽培され、特にペイ・ナンテ地区がミュスカデ最大の生産になっています。
元々栽培されていたブルゴーニュ地方やフランシュ・コンテ地方ではミュスカデの栽培が禁止された歴史もあり、現在は殆ど栽培されておりません。

ミュスカデは冷害や害虫にも耐久性が強い品種で、そのうえ日照量に恵まれなくても糖度が上がりやすい特徴があります。
ミュスカデはピノ・ノワールとグエ・ブランを掛け合わせた品種=シャルドネの姉妹品種にあたり、同じくブルゴーニュ地方原産のピノ・ブランとも似ているため、カリフォルニアやオーストラリアでは過去にピノ・ブランと誤認されることもあったそうです。

ミュスカデの産地(土壌・気候)

上に記した通り、ミュスカデのほとんどがロワール地方のペイ・ナンテ地区に集中して栽培が行われています。
ロワール地方は全長約1,000kmもあるロワール川沿いにワイン産地が広がり、ペイ・ナンテ地区はその中でも一番海に近いエリアにあります。また、北緯47度と高緯度に位置するため冷涼な気候が特徴です。

太平洋に面したペイ・ナンテ地区は海洋性気候の影響を受けて夏と冬の気温差が少ない比較的穏やかな気候ですが、年間降雨量は800mmと多めで春先や収穫前の秋も雨が多いため、適切な栽培管理が大切になります。
突然の雷雨や雹など気候上のアクシデントは稀ですが、襲われれば重大な被害を招くことと、ペイ・ナンテ地区は春霜の頻度を考慮する必要もある産地なのです。

土壌は片岩質、片麻岩質、花崗岩や沖積土壌など様々ですが、一貫して水捌けの良い土壌が多く湿度の多いペイ・ナンテ地区では重要な役割を果たしています。

ミュスカデの歴史

海に程近いロワール川河口は古くから貿易が盛んで様々品種が持ち込まれていました。
1世紀にはナント周辺にローマ人がブドウを植えた記録が残されており、その後は修道士たちの力によってブドウ畑が発展、陸路より海路が主だった中世フランスのロワールワインはボルドー地方に次ぐ国外輸出量を誇っていました。

ナント地区周辺も黒ブドウを中心にブドウ栽培が繁栄しましたが、18世紀初頭の凍害によりブドウ品種が全滅しますが、その時にブルゴーニュ地方から持ち込まれ寒さに強いミュスカデが導入されたのです。
歴史を遡ると17世紀、ミュスカデはオランダとの貿易で発展していたのですが当時は主に蒸留酒用のブドウとして生産され、特に貿易に有利な河口に近いペイ・ナンテ地区で栽培が進んだ記録があります。

その後ミュスカデは、ペイ・ナンテ地区の冷涼な気候と石灰質の土壌に適応しつつ、地元の海の幸との相性も良いことから、この地区の代表的なブドウ品種となり、1936年、フランスで最も古いAOCの栄誉に輝きました。

ミュスカやミュスカデルとの違い

名前が似ている品種でミュスカやミュスカデルがありますが、実は全くの別品種です。

マスカット・オブ・アレキサンドリアとして知られるミュスカは、アルザスやフランス南部で栽培される華やかな香りのブドウ品種です。
フレッシュな味わいのワインだけでなく、フランス南部ではV.D.N.(ヴァン・ドゥー・ナチュレル)と呼ばれる伝統的な甘口酒精強化ワインの原料としても用いられており、フランス・アルザスなどを含め、現在は世界中で栽培がされています。

もう一方のミュスカデルはボルドー原産のブドウ品種で、ソーヴィニヨン・ブランやセミヨンと一緒にブレンドされる事が多い品種です。

2. ミュスカデのAOC

ミュスカデには、以下の4つのAOCがあります。
└ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ
└ミュスカデ
└ミュスカデ・コート・ド・ラ・ロワール
└ミュスカデ・コート・ド・グランリュ

一番ベースにあるのがAOCミュスカデで他3つのAOCが収量55hl/haであるのに対し、AOCミュスカデは70hlと多く、またシャルドネの使用が10%認められています。

ミュスカデの中でも特に生産量が多く、一般的にスーパーマーケットで見かけるミュスカデのほとんどが「ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ」と呼ばれるAOCでロワール渓谷地方のペイ・ナンテ地区周辺で造られており、4つのAOCの中でも品質が高いとされています。
栽培面積が6,000haと最も広く、この産地の3分の2を超える生産量を占めています。

残る2つのアペラシオン、ミュスカデ・コート・ド・ラ・ロワールはナント市の北東部に広がり、他のAOCミュスカデの産地よりも標高が高く、生き生きとしたワインを生み出します。

ミュスカデ・コート・ド・グランリュは1994年に認められたAOCでグランリュー湖の周辺に広がり、他の産地と比べブドウの熟し方が早く、滑らかで豊かなアロマのワインを生み出します。

3. ミュスカデを使ったワインの色や香り・味わい

ミュスカデのワインはややグリーンがかった淡いレモンイエローの色調を持ち、レモンやライム、グレープフルーツ、フレッシュな柑橘系とハーブの香りを持ちます。味わいは爽やかで生き生きとした酸味を感じることが出来る軽快な口当たりが特徴で、しっかりとしたミネラル感も加わります。

ミュスカデは日本にフランスワインが本格的に紹介されるようになった1980年代、いち早く辛口ワインの代名詞として多くのレストランやメディアに登場しました。同時期に日本に根付きつつあったシャブリは相対的に高く、ミュスカデの方が重宝されていた時代もあります。
それは日本に限らず、フランス本国でも同様でミュスカデの方がコストパフォーマンスが高く、「ミュスカデの方が気軽に愉しめる」という気風が生まれていき、投資家や生産者たちも出資し畑を拡張して生産量を増やし、いつしか世界中に輸出されることになりました。

4. ミュスカデを使ったワインの製法「シュール・リー」

ミュスカデを使ったワインの製法「シュール・リー」

ミュスカデを使ったワインのラベルによく見られる「Sur lie(シュール・リー)」はミュスカデならではのワイン製法です。
シュール・リーとは「澱の上」という意味で、その名の通り澱の上で熟成させる製法のことを指します。

通常白ワインは、アルコール発酵をさせると発酵した酵母が澱となって沈殿し、澱からワインに香りが移るのを防ぐためにすぐに分離します。しかし、シュール・リー製法では澱を取り除かずそのまま熟成させていくのです。
そもそもミュスカデはニュートラルな品種で普通に醸造をすると個性があまり出ず、ミュスカデらしさを出すのが難しいブドウなのです。

シュール・リーは基本的に樽内で行われますが、その澱の大部分は発酵を終えた酵母の菌体です。
この酵母の菌体には「多糖類」と呼ばれる成分が発生しており、それがワインに様々な影響を与えると考えられています。

こうして造られるミュスカデには独特の味わいが生まれ、ブドウ本来の柑橘類と白い花を連想させるアロマとパンのイースト香なども加わり旨味と複雑性を伴うワインになるのです。
時に、シュール・リー製法で造ったワインは発酵で生じた炭酸ガスが少し溶け込むため、瓶詰めして間もない若いヴィンテージのワインは、微発泡が見られますが泡の刺激によって爽やかな味わいを感じることが出来ます。

5. ミュスカデを使ったワインと相性の良い料理

ミュスカデはフレッシュな果実味とミネラル感を感じる味わいなので、魚介料理との相性が良く、中でもワインと合わせると生臭みを感じがちな貝類(牡蠣やムール貝など)、青魚(イワシやサンマ、ブリなど)との相性が抜群です。
ミュスカデ自体が割と軽快なワインが多いため、合わせるお料理も凝ったお料理よりは、出来るだけシンプルに素材を生かしたお料理の方が良く合います。

現地でも王道のマリアージュは「Fruits de Mer / フリュイ・ド・メール」という海の幸の盛り合わせですが、中でも生牡蠣との相性は抜群でミュスカデの塩っぽさが生牡蠣が持つ磯の香りを引き立て、焼き牡蠣は旨みをさらに深めます。
更にミュスカデは、炊き込みご飯など旨味成分が凝縮されている和食の出汁とも相性が良いです。

6. ミュスカデを使ったワイン3選

最後にミュスカデを使ったワインをご紹介します。

マルタン ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ シュール・リー ヴィエイユ・ヴィーニュ 2022

マルタン ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ シュール・リー ヴィエイユ・ヴィーニュ 2022

セーヴル川とメーヌ川の間に位置するドメーヌで元々はブドウ栽培農家ですが、1952年から元詰めを開始しました。この土地のスペシャリストとして名を馳せています。
樹齢60年にも及ぶ古樹を採用し、ワイン自体に厚みやコクを表現する一方で現在はサスティナブルな取り組みにも力を入れ、オーガニック農法を実践しています。歴史や伝統を重んじながらも刷新的なワイン造りを行う生産者です。

コニェット ミュスカデ セーヴル・エ・メーヌ・キュヴェ・セレクション・デ・コニェット 2020

コニェット ミュスカデ セーヴル・エ・メーヌ・キュヴェ・セレクション・デ・コニェット 2020

ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌでは珍しい手摘み収穫と伝統的なシュール・リー製法によって、長期熟成にも耐えるミュスカデを造っています。
ミュスカデらしい爽やかな果実味とふくらみと複雑性があり、ミュスカデが放つ塩っぽいニュアンスもありテロワールが上手く表現されています。ミュスカデのワインの中でもひと味違う、拘りを感じることが出来る仕上がりです。

コニェット ミュスカデ セーヴル・エ・メーヌ クロ・デ・ショファルディエール 2014

コニェット ミュスカデ セーヴル・エ・メーヌ クロ・デ・ショファルディエール 2014

樹齢40年~74年のブドウを採用し、さらに45か月間、澱と共に熟成させます。こうする事でアミノ酸やペプチドがワインに溶け込み、ワイン自体にボリューム、深みと奥行きを与えています。
オレンジマーマレード、アプリコットやパンを焼いたような香ばしい香りがありミュスカデの常識を覆すようなワインです。

7. まとめ

古くから貿易都市として栄えたロワール川河口付近では様々な品種が持ち込まれて来ましたが、中でもミュスカデは品種名がそのままAOC名になっているほど、大切に扱われている品種の一つで、この品種を最大限生かすべく生まれたシュール・リーという醸造テニックを継承し現在も素晴らしいワインを世に送り出しています。
手ごろな価格で気軽にワインを愉しめるのもミュスカデの特徴なので、お探しの際は是非THE CELLAR online storeを覗いてみてください。

※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。また、まとめサイト等への引用を厳禁いたします。
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高丸智天

ガストロノミー “ジョエル・ロブション” シェフソムリエ

【経歴】
1977年 広島県生まれ。
ホテル・レストラン専門学校卒業後、千葉県のホテル内フレンチレストランで10間年勤務したのち
2008年 ガストロノミー “ジョエル・ロブション” 入社
2012年 同店 プルミエソムリエ就任
2016年 同店 シェフソムリエ就任
2023年 テタンジェ社よりシャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ 叙任
現在に至る

ミシュランガイド17年連続三ツ星「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」シェフソムリエ。シャトーレストランにストックする3,000種類 25,000本のワインを熟知し、お客様に最適な1本を提案している。また、料理とワインのマリアージュには定評があり、多くの人から高い支持を得ている。

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