ワイナリーから車で程近く、山間部を切り開いた場所に畑がある。標高350m前後、一番高いTOMOEシリーズ「シャルドネ新月」の畑は標高400mに位置する。どの畑も開けた場所にあるので、日の出から日の入りまでしっかりと太陽が当たる。また、盆地ならではの気候で、昼夜の寒暖差が大きく、ブドウがゆっくり熟す環境にある。山肌を通る風も吹くので、比較的病気になりにくい環境なのも嬉しいところだ。

この環境があるからこそ、日本では珍しい貴腐ワインができる。貴腐ブドウが育つためには、
1.早朝霧が発生し貴腐菌が育つこと
2.日中は晴れて乾燥し水分が蒸発すること
3.ある一定期間その状態が続くこと
という条件がある。毎年お目見えするわけではないが、セミヨンなどで造られる極上のデザートワイン「貴腐ワイン」もラインナップにある。

農家との信頼関係があるからこそ、夫々が栽培するブドウ品種や仕立て方のすみ分けができている。
自社圃場では、黒ブドウのシラー、ピノ・ノワール、プティ・ヴェルドを垣根仕立で栽培している。樹齢20年程度のブドウ樹だ。一番栽培量が多いのがシラー。
うちのシラーは、黒コショウといったスパイスのニュアンスが強く出るのが特徴で人気と沖田さんが評されるもので、2023年のG7広島サミットでも提供された一本だ。尚、現在自社圃場を拡張中で、最終的には4haになる見込み。白ブドウのシャルドネとソーヴィニヨン・ブランを栽培予定とのこと。サミットで提供されたこともあり、「シャルドネ新月」の人気が上がり、専用圃場だけでは需要に追い付かないと判断してとのことだ。


マスカット・ベーリーAについては契約農家から仕入れて醸造しているが、ラベルには農園名が明記されている。毎年高品質なブドウを栽培してくれるという信頼があるからこその計らいだ。
同じ地域で育つ同じ品種とは言え、契約農家毎にブドウの味わいが異なるので、仕込み方も変えている。

単一品種で仕込むワインも多いが、面白いブレンドワインもある。例えば、小公子80%にマスカット・ベーリーAを20%ブレンドした赤ワイン。両方とも日本固有品種だが、小公子はヤマブドウ系で独特な野性味あふれる風味がある一方、マスカット・ベーリーAにはチャーミングな果実味がある。
何度もテイスティングを重ね、夫々の良さが一番発揮されるブレンド比率を見出し、日本ワインらしさが溢れる一本に仕上がった。単一品種にはない掛け合わせの奥深さを味わえる。