ベルウッドワイナリーの鈴木智晃さんが独立に選んだ土地は、朝日町ワインのある西村山郡からは、南東に離れた山形県上山市。蔵王連峰の麓、温泉地として名高いこの土地で、タケダワイナリー、ウッディファームに続き、3軒目のワイナリーとしてスタートした。


エボニー調の木材とマットブラックの調和が美しい、モダンなワイナリーは、2020年の春に完成したばかりだ。周囲を田畑に囲まれた新築な平屋建ては、田園風景の中でクールに異彩を放っている。

自社畑は、南斜面にメルロ、カベルネ、北斜面にピノノワール、ピノグリ、ソーヴィニヨン・ブランを植えています。土壌的には、粘土質が強く、その中に風化した白い礫が混ざっています。雨が仮に降ったとしても、雨が粘土質の表土の上を流れていくという点で、一定の保水力がありながらも、水はけがいいですし、独立した一つの丘なので、上から水が流れてくることもありません。
2020年は植樹から3年が経ったピノ・ノワール、ピノ・グリ、ソーヴィニヨン・ブランを初めて収穫した。蔵の中には、バリック樽も並び、鈴木さんの実験的なブレンドを含め、多数のキュヴェがみられる 。
今までは、委託醸造だったので、ビン詰めまでの期間が短いペティヤンなどのワインを造るにとどまってきました。一方で、ワイナリーが完成した今年からは、欧州系品種を原料とした製造期間の長いスティルワインを仕込むことが出来ています。
自社畑の収穫も、糖度が20度を超えしっかりと熟し、買いブドウも同様に、20度を超える高い糖度のブドウを買うことが出来ています。山形で栽培が難しいといわれる、ピノ系品種でもこのようなクオリティを得られたことは、改めて上山のテロワールのポテンシャルに気付かされた部分でもあります。

更に大きな期待をかけるのが、自社畑の南側斜面に植樹したカベルネ、メルロだ。
若木であるため、2020年は、まだ収穫に至っていないが、カベルネの成功例が多い山形の土地で、鈴木さんはこの品種に強い自信を抱いている。
カベルネ、メルロについては、単純に自分が好きだからという理由で選びました。出汁のような味わいも好きではあるのですが、せっかく自分が造るならしっかりとした濃いワインを目指したい。タケダワイナリーさん、ウッディファームさんの実績もありますから、上山であればこれらの品種もしっかりと熟すと考えています。今はまだ、収穫ができる段階ではありませんが、今年の他の品種の収穫の品質を見る限り、同じようにポテンシャルを持ってくれるブドウになるのではないかと思っています。