1. ヴィオニエとは?
ヴィオニエはフランス南部、北ローヌ地方発祥と言われる白ブドウで、コンドリューとシャトー・グリエが代表的な産地です。
小粒で比較的果皮が厚く、温暖な気候での栽培を好み、干ばつに強い一方、芽吹きが早いため霜に弱く、ウドンコ病や花ぶるいなどで実のつきが悪くなりやすい品種です。そのため、収量は低めで不安定という難しさがあります。また、特徴的なアロマを得るためにはブドウの完熟を待つ必要がある一方、糖度が上がりやすく酸が落ちやすいので、糖度、酸味、香り、味わいのバランスが整っている期間が非常に短く、収穫期の見定めが難しい栽培者泣かせの品種でもあります。
絶滅の危機から復活した品種
ヴィオニエは、1980年代後半までは北ローヌ地方で静かに愛されてきた、知る人ぞ知るブドウ品種でした。1960年代後半時点では、コンドリューとシャトー・グリエ周辺のみで栽培されており、広さはわずか14ha!!それが、2000年には世界で3,000ha、2010年には11,400ha、そして2016年には16,000haと栽培面積を広げています。絶滅の危機を迎えていたとは思えない快進撃です。一体何が起こったのでしょう?
ヴィオニエが絶滅の危機に陥った理由から紐解きましょう。北ローヌ地方ではローヌ川渓谷の急斜面でブドウが栽培されています。斜面は水はけが良く、日照を強く受けるので、ブドウが熟しやすいという利点があるのですが、かなりの急斜面。中には斜度60度にも及ぶ危険な場所もあります。機械化は難しく、全て手作業という過酷な労働環境にも関わらず、上述の通り収量は少なめ。そこで、高収入が見込まれる他の作物に栽培を切り替える農家が増えたのです。

労働者には過酷な環境ですが、ワインの品質は高いことで有名でした。古くは14世紀、アヴィニョンに居住した教皇がコンドリューの白ワインの愛好家で、高い評価を受けた記録があります。また、美食家で「食通の王」とも称されたキュルノンスキー氏(1872-1956)が、ブルゴーニュのモンラッシェやボルドーのシャトー・ディケムと並べる形で、シャトー・グリエをフランス5大白ワインの一つに選定したほど。
生産者の努力も忘れてはいけません。ヴィオニエ復活の立役者として知られるドメーヌ・ジョルジュ・ヴォルネの前当主、ジョルジュ・ヴェルネ氏は、多くの生産者がブドウ栽培を辞めた苦しい時期に、コンドリューの原産地呼称委員会の委員長を30年以上務め、急斜面の畑を守りながら他の生産者を鼓舞し続けます。
地道な努力が実を結び、徐々にこの地でワイン造りを目指す人が集まり、畑が増え、産地全体の品質向上に繋がり、その波は国を越え、今では多くの国でヴィオニエが植えられるようになったのです。
赤ワインの補助品種
コンドリューやシャトー・グリエではヴィオニエ100%の白ワインが有名ですが、同じ北ローヌ地方のコート・ロティでは伝統的に、黒ブドウ品種のシラーとヴィオニエを一緒に発酵して赤ワインに仕上げてきました。ヴィオニエを加えることで、シラー特有の黒コショウや肉っぽい香りが引き立つことや、シラーの発色がよくなることが理由とされています。
ヴィオニエのブレンド比率は20%までと規定されていますが、実際には0-10%の間に収まることが多いようで、今は100%シラーの赤ワインが増えてきている印象です。一方、オーストラリアでは100%シラーズが主流ですが、伝統的な製法に倣ってシラーズにヴィオニエをブレンドする生産者が増加中という逆転現象が起きています。
なお、DNA検査の結果、ヴィオニエはシラーと血縁関係があることが判明しており、DNA的にもシラーとヴィオニエは相性の良い関係と言えそうです。
2. ヴィオニエの主な産地
フランス以外にも、アメリカやオーストラリアなど世界各地の温暖な地域で栽培が広がっています。
フランス ローヌ地方
原産地、フランス南部のローヌ地方は、ローヌ川に沿った南北約200kmのワイン産地で、約50kmの空白地帯を挟んで北側が北ローヌ、南側が南ローヌに分けられ、気候や土壌などの環境が異なることから、多様なスタイルのワインが造られています。

北ローヌでは、AOC規格のコンドリューとシャトー・グリエでヴィオニエ100%の白ワインが造られています。ローヌ地方の中では冷涼な気候で育つため、アロマティックで華やかな香りがあります。また、コート・ロティでは、シラーにヴィオニエを20%まで加え、一緒に発酵させて造る赤ワインもあります。AOCの下位にあたるIGP規格では、コリーヌ・ロダニエンヌがあり、北ローヌのAOC外で育つヴィオニエを使った白ワインが、もう少しお手頃価格で楽しめます。
南ローヌでは、広域AOC規格のコート・デュ・ローヌの白ワインで、ヴィオニエがマルサンヌ、ルーサンヌ、グルナッシュ・ブランといった他の白ブドウとブレンドされ、豊かな果実味と芳醇なアロマで華やかさを与えています。
アメリカ
アメリカでの栽培は、ジョセフ・フェルプス氏が1980年代にヴィオニエの苗木を入手したのが始まりと言われています。カリフォルニアのセントラル・コーストが中心地ですが、ナパやソノマなど様々な場所で栽培されています。
カリフォルニアの太陽の恵みを受け、ブドウの糖度が高くなるため、アルコール度数も高くヴォリューム感のある仕上がりに。トロピカルフルーツを思わせるアロマがあり、樽熟成による複雑な味わいも特徴的です。
アメリカでは、カリフォルニア州以外にもヴァージニア州やワシントン州、オレゴン州などでも栽培されています。
オーストラリア
オーストラリアの様々な場所で栽培されていますが、注目されているのが南オーストラリア州のエーデン・ヴァレーです。エーデン・ヴァレーは標高が高く、冷涼な環境で育つリースリングが有名な産地です。同地に本拠地を置く、オーストラリアで最も古い家族経営ワイナリー、ヤルンバの存在も忘れてはいけません。
1980年代からヴィオニエを栽培したパイオニアで、世界的に認められる高品質なヴィオニエ生産者として名を馳せています。ヤルンバはワイナリーに独自の苗木研究所を持ち、環境に合う品種を苗木の段階から管理したり、シラーズにヴィオニエを混醸してワインを仕上げる手法を取り入れたり、オーストラリアにおけるヴィオニエの品質基準とも評されています。
3. ヴィオニエとシャルドネの違い
ヴィオニエがブレンドされる際は、ローヌ地方で栽培されているブドウをパートナーにすることが多いですが、イタリアでは国際品種のシャルドネとブレンドしたワインが成功しています。シャルドネも相性の良いブレンドパートナーという訳です。
どちらも白ワイン品種として人気ですが、知名度の高さはシャルドネに軍配が上がります。暖かい場所で育ったシャルドネであれば、ヴィオニエとアルコールのヴォリューム感は同等で、樽との相性の良さも似ています。一方、品種由来の香りには大きな違いが。シャルドネはブドウの香りが穏やかなニュートラル品種ですが、ヴィオニエは芳醇でエキゾチックなアロマが前面に出るアロマティック品種です。また、ヴィオニエは糖度が上がりやすく、酸味は穏やか。シャルドネは産地によってばらつきはありますが、冷涼な地域のものは酸味が高くなります。イタリアでは、酸味の高いシャルドネをブレンドすることで、ヴィオニエの穏やかな酸を補う役割も果たしているようです。
4. ヴィオニエを使ったワインの香りや味わい
ヴィオニエの大きな特徴はその芳醇なアロマです。アプリコット、桃、洋ナシといった有核果実やオレンジなどの柑橘類、蘭やジャスミン、スイカズラといったフローラルな香りがとにかく芳醇。また、生姜や白コショウのようなスパイス類のニュアンスも重なり、エキゾチックな印象もあります。樽熟成されているものであれば、ヴァニラやクリーミーなニュアンスもあるでしょう。
アルコール度数は高めのものが多く、アタックは強めでボディを感じますが、酸味は穏やかです。辛口ですが、トロっとした質感で甘味も感じるジューシーな味わいがありつつ、ピリッとしたスパイス感もあります。
早飲みタイプが主流ですが、熟成を経たものはドライフルーツなどの凝縮された果実感、蜂蜜などの甘みや土っぽさも加わり、より複雑な味わいがあります。
5. ヴィオニエを使ったワインによく合う料理
ヴィオニエの芳醇でエキゾチックな味わいは、スパイスやハーブ類を使う料理と良く合います。東南アジアやメキシコなどのエスニック料理や中華との相性はいいですし、ハーブで香り付けしたローストチキンもおすすめです。
また、ヴィオニエには独特のとろみを感じさせる質感があり、ほのかに乳製品の風味もある滑らかな味わいなので、クリームを使った鶏肉料理とも合わせたいところです。クリーミーなチーズやブルーチーズとも相性がよく簡単なマリアージュになりますし、ワイン単体の香りに酔いしれるのもいいですね!

6. ヴィオニエを使ったおすすめのワイン
最後にヴィオニエを使ったおすすめのワインを3本ご紹介します。
ムーラン・ド・ガサック ヴィオニエ 2022

地中海性気候に恵まれた南仏ラングドック地方は、ヴィオニエが多く栽培されている注目の場所で、リーズナブルに楽しめるものも多いです。
こちらは、ラングドック地方にある地中海沿岸の粘土石灰質土壌で育ったヴィオニエ100%で造られた、気軽に楽しめる白ワイン。熟したフルーツを連想させるたっぷりとした果実味に、フレッシュなレモンのような酸味も感じられる仕上がりで、白身魚やクリーミーな料理とのマリアージュがおすすめです。
-
白ワイン
ムーラン・ド・ガサック ヴィオニエ 2023
白ワインフランス/南仏通常価格2,145 円 (税込)通常価格単価 あたり残り8個
ヴィオニエ ヴィオニエ
デイリーに楽しめる南仏のヴィオニエ
ドメーヌ・シャンベイロン コンドリュー ヴェルノン 2022

「北ローヌの最上生産者」「北ローヌのトップワイン」にも選出される、隠れた優良生産者が造るこのワインは、北ローヌのコンドリューにある標高150メートルの南向き斜面で育った、樹齢約35年のヴィオニエ100%で造られています。
洋梨や桃のようなみずみずしい香りと、オークの樽由来のニュアンスが複雑に調和する、フィネスとフレッシュさを兼ね備えた一本。口当たりは豊かでクリーミー、熟成感あふれる余韻が長く続く、贅沢な味わいが楽しめます。
-
白ワイン
ドメーヌ・シャンベイロン コンドリュー ヴェルノン 2022
白ワインフランス/ローヌ通常価格10,010 円 (税込)通常価格単価 あたり残り2個
ヴィオニエ ヴィオニエ
北ローヌのトップワイン
ジョルジュ・ヴェルネ コンドリュー レ・シャイエ・ド・ランフェール 2022

コンドリューの品質向上に努め、世界的に認知されるようになった立役者で、コンドリューを語る際に欠かせないドメーヌが造る、ヴィオニエ100%の白ワインです。
「シャイエ・ド・ランフェール(地獄の丘陵)」とは、作業が危ない急斜面に畑が位置し、ヴィニュロンの仕事が地獄のよう、ということから名付けられたもの。
同ドメーヌが造る伝説のヴィオニエ、「コトー・ド・ヴェルノン」と肩を並べるほどのポテンシャルを持ちながらも、全く異なる表情を見せる個性豊かなワインで、若いうちから複雑で奥深い味わいを堪能できるので、今すぐ楽しみたい方にうってつけです。
-
送料無料白ワイン
ジョルジュ・ヴェルネ コンドリュー レ・シャイエ・ド・ランフェール 2022 *
白ワインフランス/ローヌ通常価格25,850 円 (税込)通常価格単価 あたり残り1個
ヴィオニエ ヴィオニエ
表現力豊かで個性の強いワイン
7. まとめ
ヴィオニエは、フランス南部北ローヌ地方で主に栽培される、アプリコットや桃のような濃厚な果実味と、優美な花やクリームのうっとりとするような風味が魅力的な白ブドウです。シラーの魅力を更に引き立たせるために少量ブレンドされることもある影の力持ちでもあります。
ヴィオニエを使ったワインを飲み比べてみたい方は、カーヴドリラックスのオンラインサイトをぜひご覧ください。