シャンボール・ミュジニーとは?
シャンボール・ミュジニーとは?

基礎知識や人気の理由、おすすめワインについて解説

基礎知識や人気の理由、おすすめワインについて解説

THE CELLAR JOURNAL May.2024 --- writer : Taku Iguro

フランス、ブルゴーニュの「シャンボール・ミュジニー」は華やかな香りとシルキーな飲み心地が特徴で世界中のワイン愛好家から愛されています。
ブルゴーニュの中でも特に人気の高い地域ですが、基礎知識や人気の理由などを知っておくと、より美味しくシャンボール・ミュジニーを味わえるかもしれません。
本記事では、そんなシャンボール・ミュジニーについて解説します。
フランス、ブルゴーニュの「シャンボール・ミュジニー」は華やかな香りとシルキーな飲み心地が特徴で世界中のワイン愛好家から愛されています。
ブルゴーニュの中でも特に人気の高い地域ですが、基礎知識や人気の理由などを知っておくと、より美味しくシャンボール・ミュジニーを味わえるかもしれません。
本記事では、そんなシャンボール・ミュジニーについて解説します。

シャンボール・ミュジニーとは?基礎知識や人気の理由、おすすめワインについて解説

基礎知識や人気の理由、おすすめワインについて解説
赤ワイン2024.07.05

1. シャンボール・ミュジニーとは?

シャンボール・ミュジニーの基礎知識

シャンボール・ミュジニーは、フランスのブルゴーニュ地方、コート・ド・ニュイ地区にある村の名前を指します。 村の北側はモレ・サン・ドニ、南側がヴージョに挟まれている人口約300人強の小さな村です。
その中でブドウ畑は特級、1級、村名すべて合わせて180ha(ヘクタール)ほどで生産者はわずか20人程度。似たような名前で「ミュジニー」というのがありますが、こちらは村の南部にあるグラン・クリュ(特級畑)の名前になっています。

シャンボール・ミュジニーのワインは、ブルゴーニュで最も女性的なワインと評される通り、華やかでエレガントな香りと、シルクを思わせる滑らかな飲み心地が特徴です。

2.シャンボール・ミュジニーの基礎知識

続いてシャンボール・ミュジニーの基礎知識について解説します。

シャンボール・ミュジニーのブドウ品種

シャンボール・ミュジニーを名乗る際は赤ワイン用のブドウ品種であるピノ・ノワールのみが使われます。 ピノ・ノワールは淡い色合いで穏やかな口当たりと華やかな香り、エレガントな味わいで非常に人気の品種ですが、繊細で栽培が難しいため限られた産地で栽培されています。
先ほど紹介したグラン・クリュのミュジニーは、ワイン法が施行された1936年にA.O.C.に認定されており、コート・ド・ニュイ地区のグラン・クリュの中で、唯一シャルドネから白ワインを造ることが認められています。シャルドネが栽培されていないわけではないですが、その数はごくわずかと考えるとコート・ド・ニュイ地区はピノ・ノワールに向いた土地なんだなと気づかされます。

シャンボール・ミュジニーを生み出す自然環境

シャンボール・ミュジニーを生み出す自然環境

それではシャンボール・ミュジニーの「エレガントで女性的」とも言えるワインはどのようにして造られるのでしょうか。 以下3つの自然環境の特徴から、ミネラル感と酸が豊富なワインができます。

特徴1:他の村に比べて、石灰岩が多い土壌
└石灰岩が多く、粘土質は少ない
└ミネラルを豊富に含んでいるため、ブドウが繊細な味わいになる

特徴2:村の背後にアンバン渓谷がそびえ立ち、南端にオルヴォー渓谷がある、起伏に飛んだ地形
└地層の奥深くまで到達した亀裂が多く、樹木の根が石灰岩の奥深くに到達できるため、十分な量のミネラル分を吸い上げられる
└日照条件や風の向きが複雑に影響する

特徴3:丘陵地の斜面に位置するため標高が高い
└標高が250~300mと、比較的高い位置に畑がある
└ブドウの熟成を進ませ過ぎることなく、酸を保った状態で収穫できる

土壌や気候条件といった様々な要素が影響し合っていることが分かります。

シャンボール・ミュジニーが人気の理由

シャンボール・ミュジニーが人気の理由

シャンボール・ミュジニーが人気の理由として、エレガントさは先ほど述べた通りですが、同じ村のワインでも土壌の性質で味わいが異なることも一つの理由かもしれません。
南北で異なる土壌のため、シャンボール・ミュジニー村のグラン・クリュ ボンヌ・マールが男性的な力強いワインなのに対し、ミュジニーは繊細でエレガントな味わいと言われます。そういった異なる自然環境が生み出した2つの味わいが多くのファンを惹きつけているのでしょう。 ボンヌ・マールとミュジニーについては、次の項で紹介します。

3.シャンボール・ミュジニーの2つのグラン・クリュ(特級畑)

シャンボール・ミュジニーには、ボンヌ・マールとミュジニーという2つのグラン・クリュ(特級畑)があります。両者とも対照的な性質で造られるワインの特徴も大きく異なっています。

ボンヌ・マール(Bonnes-Mares)

ボンヌ・マール(Bonnes-Mares)

ボンヌ・マールは村の北端に位置し、モレ・サン・ドニ村とシャンボール・ミュジニー村にまたがっています。勾配がゆるやかなため、表土が厚く、粘土の質も強いのが特徴です。さらに細かく見ていくと、粘土質を多く含む赤い土壌のテール・ルージュと石灰岩が多いテール・ブランシュに分けられます。

味わいは骨格がはっきりした、パワフルで、タンニンが強く感じられる男性的なワインが生み出されます。“Dark side”of Chambolle 『Chambolleの陰』と言われるMoreyとのハイブリッドのような畑です。“Unearthed bas-relief portraying a trinity of Roman goddesses”とBonnes Maresの名前の由来の通り、女神のようなエレガンスと彫刻のような明確な輪郭が特徴

ミュジニー(Musigny)

ミュジニー(Musigny)

もう一つのグラン・クリュ、ミュジニーは村の南端(ヴージョ、ヴォーヌ・ロマネ側)に位置し、石灰質の岩が多いクロ・ヴージョに隣接しています。勾配がきついため、表土が薄く、地層の石灰岩が表土近くまで占めており、石灰岩が多い土壌のお陰で、ミネラルが豊富でエレガントな女性的なワインが実現します。一般的なシャンボール・ミュジニーの特徴である「エレガントで華やか」は、ミュジニーのワインが表現する味わいを指しています。 コート・ド・ニュイ地区のグラン・クリュの中で、唯一シャルドネから白ワインを造ることが認められているのもこのミュジニー。植え替えのため、1994年~2014まで生産されていませんでしたが2015年から再度造られるようになりました。ただし生産量は約2000本と少量のためなかなか出会うのは難しいかもしれません。

4. シャンボール・ミュジニーの6つのプルミエ・クリュ(1級畑)

次に、シャンボール・ミュジニーの6つのプルミエ・クリュ(1級畑)について紹介します。

レ・ザムルーズ(LES AMOUREUSES)

レ・ザムルーズ(LES AMOUREUSES)

「恋する乙女たち」という意味を持ち、グラン・クリュ ミュジニーの直下に位置する特別なプルミエ・クリュです。シャンボール・ミュジニーのプルミエ・クリュの中でも特に高い人気を誇っています。 品質もグラン・クリュと肩を並べるほどで、ミュジニーの次に高価なワインになり、グラン・クリュであるボンヌ・マールより高価な場合もあります。 畑上部の土壌はコンブラシアン石灰岩というミュジニーと同じ石灰質土壌ですがより表土が薄く、ミュジニーよりデリケートで線は細いが芯の通った力強い味わいとなっています。

レ・シャルム(LES CHARMES)

「レ・ザムルーズに次ぐプルミエ・クリュで、レ・ザムルーズから2つ隣に位置し、味わいも似ていると言われます。
レ・ザムルーズと比べるとレ・シャルムの方が優しい、柔らかい味わいと言えるでしょう。 レ・シャルムを境にシャンボール・ミュジニー村の扇状地エリアが終わり、この先は傾斜がついて南部エリアへ繋がっています。

レ・シャルム(LES CHARMES)

レ・フュエ(LES FUEES)

レ・フュエ(LES FUEES)

北側のグラン・クリュ ボンヌ・マールの隣に位置しており、ボンヌ・マールと同様に母岩で表土は厚い土壌です。 野性的な果実味とグリップのあるタンニンにより骨格がはっきりしたワインが造られます。

レ・クラ(LES CRAS)

この村のプルミエ・クリュの中で最も標高が高い場所に位置します。表土は薄く、石灰質が豊富な土壌となっています。 冷涼な気候と豊富な石灰質からくる繊細でミネラル感に富んだプルミエ・クリュです。

レ・クラ(LES CRAS)

レ・サンティエ(LES SENTIERS)

レ・サンティエ

ボンヌ・マールの直下に位置するプルミエ・クリュ。シャンボール・ミュジニー村北側の粘土質の厚みのある土壌で黒系果実の風味があふれます。

レ・フスロット(LES FEUSSELOTTES)

シャンボール・ミュジニー村の中心部にあるプルミエ・クリュです。
シャンボールで最も深く、肥沃な土壌から構成される平坦な畑です。

レ・フスロット

5.シャンボール・ミュジニーの村名クラスワイン

シャンボール・ミュジニーの村名クラスワイン

グラン・クリュ、プルミエ・クリュと紹介してきましたが、もちろん村名クラスのワインでも素晴らしいワインが造られています。造り手によっては村の北部と南部のワインをブレンドし、両方の個性を掛け合わせたバランスの良いワインというのも造っています。

6.シャンボール・ミュジニーに合う料理

繊細さかつ味わいの強いシャンボール・ミュジニーには、仔羊のローストなどシンプルな肉料理がおすすめです。 ブルゴーニュの郷土料理であるコック・オー・ヴァン(鶏肉の赤ワイン煮込み)との相性も良いでしょう。

7.おすすめのシャンボール・ミュジニー3選

おすすめのシャンボール・ミュジニー3選を紹介します。

ブシャール・ペール・エ・フィス シャンボール・ミュジニー 2020

ブシャール・ペール・エ・フィス シャンボール・ミュジニー 2020

ブルゴーニュの大規模生産者の一つで多くの畑を所有しています。 シャンボール・ミュジニーらしい赤い果実の香りと、ほのかにスモーキーさを感じるアロマが広がります。リッチでありながら柔らかなタンニンが感じられます。

赤ワイン
ブシャール・ペール・エ・フィス シャンボール・ミュジニー 2020

原産国 フランス / ブルゴーニュ・シャンボール・ミュジニー
品種 ピノ・ノワール
度数 13%

クリストフ・ビュイッソン シャンボール・ミュジニー オー・ゼシャンジュ 2021

クリストフ・ビュイッソン シャンボール・ミュジニー オー・ゼシャンジュ 2021

ワイン評価誌で高コスパワインを生み出す造り手として評価が高い生産者です。
こちらはシャンボール村の中央に位置するプルミエ・クリュ「オー・ゼシャンジュ」のブドウを使用しています。 赤系果実にスミレや牡丹を感じる、優美な香りとシャンボールならではの、シルキーで滑らかなタンニンが感じられます。

赤ワイン
クリストフ・ビュイッソン シャンボール・ミュジニー オー・ゼシャンジュ 2021

原産国 フランス / ブルゴーニュ・シャンボール・ミュジニー
品種 ピノ・ノワール
度数 13.5%

シュヴィニー・ルソー シャンボール・ミュジニー レ・コンボット 2021

シュヴィニー・ルソー シャンボール・ミュジニー レ・コンボット 2021

プルミエ・クリュ「オー・コンボット」内に0.1haほど所有しています。土壌は粘土石灰質で樹齢は45年です。 繊細さと濃厚さのハーモニーが味わうことのできるコンボットらしさが感じられる1本です。はじめは赤系果実のアロマ、次第にスパイシーなトリュフのようなニュアンスも感じられるのでゆっくり時間をかけて楽しむのがおすすめです。

赤ワイン
シュヴィニー・ルソー シャンボール・ミュジニー レ・コンボット 2021

原産国 フランス / ブルゴーニュ・シャンボール・ミュジニー
品種 ピノ・ノワール

6.まとめ

華やかな香りとシルキーな飲み心地が特徴の「シャンボール・ミュジニー」は、世界中のワインラバーから人気を集めています。
ブルゴーニュのワインの中ではIron fist in a velvet glove(控え目に見えるけど実は厳しい)と呼ばれるように、柔らかい味わいの中に芯のある強い味わいが特徴です。村の北部と南部で味わいが大きく異なるので、飲み比べてみるのも面白いかと思います。 シャンボール・ミュジニーを探される際はぜひTHE CELLAR online storeをご覧ください。

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井黒 卓

ロオジエ ビバレッジ・ディレクター兼シェフソムリエ

2020年 第9回全日本最優秀ソムリエコンクール優勝
総合ワインコンサル TACTICAL WINE CONSULTANT代表
一般社団法人 日本ソムリエ協会 理事