Domaine Prieuré Roch

Domaine Prieuré Roch

ドメーヌ・プリューレ・ロック
ドメーヌ・プリューレ・ロック

ドメーヌ プリューレ・ロック - テロワールを最大限に引き出してワインを造る事、私たちはテロワールの美しさを引き出す為の伴奏者でしかない

2024.09.18
プリューレ・ロック ▲ 案内人:アントニオ・クァリ氏

「テロワールを最大限に引き出してワインを造る事、私たちはテロワールの美しさを引き出す為の伴奏者でしかない」アントニオ・クァリ氏

2024.06.20 --- writer Kasahara

web サイト
https://domaine-prieure-roch.com/

1. ニュイ・サン・ジョルジュ村の概要

恐らく村の規模(人口)からいうとコート・ド・ニュイで一番大きいのではないだろうか。さてそのニュイ・サン・ジョルジュ村の畑は、他のニュイのアペラシオン同様、赤の畑がほとんどだ。全体では約310ヘクタールあるが、そのうち約97%にあたる約300ヘクタールが赤ワインの畑だ。ほぼ毎年話題になっている、グラン・クリュへの昇格についての話題に付随する話だが、現状はグラン・クリュが無いアペラシオンとなっている。ただしプルミエ・クリュの数は約40近くあり、これはどこよりも多い。

ヴォーヌ・ロマネに接する村北側と、中央に村があり、南側に広がるのがプリューレ・ロックの本拠地となるプレモー・プリセ地区と、南北に長い。その為ワインの味わいについてもニュイ・サン・ジョルジュの南側なのか、北側なのか、で特徴が変わる為、大抵ワインの味わいを話す際には畑の区画がどこなのか、という所からスタートするのが通例だ。
一般的なイメージで言うと堅牢なタンニンと黒系の果実味、重厚な味わいで、これまた好き嫌いの分かれるエリアでもある。

2. ワイナリーの歴史

1988年、皆さまもご存じの元DRC共同経営者であるアンリ・フレデリック・ロックが創設したドメーヌ。ロック氏はドメーヌ・ルロワを運営するラルー・ビーズ・ルロワ女史の姉であるポリーヌ氏が母にあたる。コンティ公の為に建てられたシャトーの敷地内にある畑、クロ・ゴワイヨットを取得、その他の畑を含めてわずか2ヘクタールからのスタートだった。その後畑の取得を繰り返す間に、2003年にヤニック・シャン氏がドメーヌのチームに加わり、2010年からドメーヌ・プリューレ・ロックの共同経営者として運営に携わっている。今回対応をしてくれたアントニオ氏も同年からドメーヌで仕事をスタートし、現在では醸造責任者を務めている。残念な事にアンリ・フレデリック・ロック氏は2018年冬に病気で逝去したが、その後は共同経営者であるヤニック氏がドメーヌを引き継ぎ、栽培から醸造、ドメーヌの運営にあたっている。

2013年から10年かけて作ったという新社屋、2階は直営のレストランとなっている。 ▲ 2013年から10年かけて作ったという新社屋、2階は直営のレストランとなっている。
今回案内をしてくれた醸造責任者のアントニオ氏 ▲ 今回案内をしてくれた醸造責任者のアントニオ氏

3. 畑の特徴

1988年に2ヘクタールの畑からスタート。
アンリ・フレデリック・ロック氏もその畑の取得に非常に拘っていたとされる、コンティ公の歴史にまつわるヴォーヌ・ロマネ・クロ・ゴワイヨットの畑からヴォーヌ・ロマネ・オート・メージエール、コトー・ブルギニヨン、ガメイ、ピノ・ノワール、シャルドネ、ヴォーヌ・ロマネ・レ・クルを所有。その後
1990年にクロ・ド・ヴージョを、

1994年はクロ・ド・ベーズとヴォーヌ・ロマネ・プルミエ・クリュ・レ・スショ、

1995年にニュイ・サン・ジョルジュ・プルミエ・クリュ・クロ・デ・コルヴェ、

2009年にニュイ・サン・ジョルジュ・プルミエ・クリュ・クロ・デ・ザリジエールをそれぞれ取得。

2010年にはラドワの赤・白、2018年にサヴィニー レ ボ-ヌ ドゥスュ レ ゴラルド赤・白、2019年にラドワ(※)の別の畑で赤・白を取得

2020年にモノポールのジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ・クロ・デ・ヴァロワル(※)を取得、この畑はクロ・デ・コルヴェと同じ5.2ヘクタールあり、現在は全部で22ヘクタールの畑を所有している。

これら全ての畑で実践されている栽培は700年以上前にシトー派の修道士が行っていた有機農法を厳格に実践。除草剤、化学肥料なども一切使用しない。

※現在は2種(ラドワとラドワ・ルクル)のラドワをリリースしているが、これは2019年に取得したラドワがビオに転換中の畑だった為、分けて醸造する必要があった為。2022年からはリリースを1種となる予定。

新社屋の斜面上に広がる、1級畑クロ・デ・ザリジエール
▲ 新社屋の斜面上に広がる、1級畑クロ・デ・ザリジエール

4. 醸造の特徴

哲学は当時から変わっておらず全房発酵で造る事(赤は全て全房発酵です。)、暑くても寒くても雨が降っても、添加物は使用しない、補糖も補酸もせず、フィルターもかけません。酵母の添加もしません。テロワールを最大限に引き出してワインを造る事です。私たちはテロワールの美しさを引き出す為の伴奏者でしかない。

とアントニオ氏。
スタッフが使用している樽のメーカーやその焼き方について質問した際も、「アンリ・フレデリック氏が選んだ樽メーカーやトースト方法は当時のまま変えていない。」と返答していたことからも、アンリ・フレデリック・ロック氏のワイン造りへの哲学が脈々と引き継がれている。最近は新樽の比率を下げていて、最近は古樽の比率を上げているようだ。

「 どれだけワインが新樽の持つ風味等を吸収出来るのか、という問題もありますが、全体的に新樽比率は下げています。
(アントニオ氏)」

テイスティングは醸造所の隣にある部屋で行われた ▲ テイスティングは醸造所の隣にある部屋で行われた

5. 新しいポートフォリオ「クロ・デ・ヴァロワル」

2021年は厳しい年でした。春先に霜害に合いました。その後の開花は問題なかったので、上手くいくかと思ったのですが最終的には通常年と比べると50%程度しか収穫する事が出来ませんでした。7月末から8月頭にかけて毎日雨が降りました。暑いと思ったら、雨が降っての繰り返しで病害が発生しました。選果をかなりする必要が出てきました。また収穫人の数が確保出来なかった年でもあり、そういう点でも厳しかったです。その年はロックダウンなどがあった後だったので、あまり人々が外に出て、集まる事をしなかったからです。」

ボトルを活用した照明は閉店したビストロックを彷彿とさせる雰囲気 ▲ ボトルを活用した照明は閉店したビストロックを彷彿とさせる雰囲気
収穫時にはキッチンとして使用される部屋でテイスティング ▲ 収穫時にはキッチンとして使用される部屋でテイスティング

天候不良以外にも様々な困難があったヴィンテージ、という事なのだろう。ただし醸造家としては難しい年程、愛着があるという話は耳にするが、プリューレ・ロックの2021年もそのような年となったようだ。

2021年は私のお気に入りのヴィンテージです。2010年からドメーヌで私が働き始めた当時飲んだ、ロックのワインを思い出します。当時飲んだ古いヴィンテージを試飲すると、やはり酸味があってワインの味わいが締まって緊張感のあるものだった。最近は地球温暖化の影響があって味わいも変化しています。」

ニュイ・サン・ジョルジュ・プルミエ・クリュ・クロ・デ・コルヴェ ヴィエイユ・ヴィーニュ

「まずは、ニュイ・サン・ジョルジュ・プルミエ・クリュ・クロ・デ・コルヴェ ヴィエイユ・ヴィーニュです、こちらは1年半熟成しています。新樽比率は40%です。2021年のヴィンテージは昔ながらのプリューレ・ロックのスタイルを彷彿とさせますね。綺麗な酸と今でも楽しめるような果実味が出ています。」

話にあった通り、本当に味わいや香りの要素が開いて、素直にワインとして楽しめる。アントニオ氏曰く、21年のコルヴェはいつ開けてもフレンドリーで、その点でも他のヴィンテージとは印象が異なるとの事。

ヴォーヌ・ロマネ プルミエ・クリュ・レ・スショ

「次はヴォーヌ・ロマネ プルミエ・クリュ・レ・スショです。レ・スショはヴォーヌ・ロマネの畑の中でも最も剛健で、肩が張った力強いワインです。厳つい男性というイメージですね。これも1年半位の熟成をしていて、80%が新樽を使っています。」

レ・スショはヴォーヌ・ロマネの1級畑で1番広い畑でもあり、イマイチ味わいの印象が無いのだが、クロ・デ・コルヴェと比較してもやはり硬いタンニンが感じられる。とは言え、ヴォーヌ・ロマネらしいフィネスも感じられ、長い余韻も有り熟成も楽しみなワインだ。

ジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ・クロ・デ・ヴァロワル・ヴィエイユ・ヴィーニュ

「次はジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ・クロ・デ・ヴァロワル・ヴィエイユ・ヴィーニュです。ラヴォ―の背斜谷にある区画で回りは森に囲まれています。(ラヴォ―・サン・ジャックの上部箇所)ドメーヌ・ド・ヴァロワ―ルが持っていたモノポールです。2020年が初ヴィンテージです。今のこのクロ・デ・ヴァロワルは前の所有者の剪定方法等以前のままですが、ビオに転換して少しずつ変えて、6,7年経てばかなり品質が良くなるのではないかと思っています。2,000リットルの大樽で1年間熟成しています。」

まだ栽培面を中心にドメーヌの理想の形にはなっていないのだろうが、香りは既にプリューレ・ロックらしさが感じられる。後味は未だ未だ発展段階なのか、やや果実味が閉じている印象か。

クロ・デ・ヴァロワルの畑の位置を説明しているアントニオ氏 ▲ クロ・デ・ヴァロワルの畑の位置を説明しているアントニオ氏

クロ・デ・ヴァロワルは背斜谷(コーム)の一番奥のどん詰まりにある畑だったので、あまり高く評価されていなかった地球温暖化で評価が高まってくると思う。畑は北側で冷たい風が流れる場所で、また土壌は粘土質が少なめで、直ぐに石灰の岩盤が出てくるような所なので、ワインにも清涼感が出ていて良い畑です。

「斜面の一番下の区画は遅く熟すのですが、そこをクロ・デ・ヴァロワル・モノポールとしてリリースし、上部はジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ ヴィエイユ・ヴィーニュとして販売しています。」

6. 星付きを狙う?!「Premnord」をチェック

ドメーヌ直営だった「ビストロック」が2021年に閉店し、2023年に満を持してオープンしたドメーヌ直営のレストランが「Premnord(プレムノルト)」だ。

PREMNORD入口、手前にはプリューレ・ロックの大きなロゴが▲ PREMNORD入口、手前にはプリューレ・ロックの大きなロゴが
全体にシックなデザインで統一された店外、どことなくTHE CELLAR と壁色が似ている… ▲ 全体にシックなデザインで統一された店外、どことなくTHE CELLAR と壁色が似ている…

お料理はシンプルな味付けながら、一つ一つ美味しい!あまり奇をてらったようなものはなく、ガッツリ食べるというよりつまみながらゆっくりとワインを頂くという感じのスタイルです。流石にワイナリーの運営なのでワインリストはかなり分厚い!心なしか、自然派スタイルの造り手が多く載っているようです。軽いコースセットで40ユーロ弱、もちろんアラカルトでも注文が出来て、それぞれ20ユーロ以下のものがほとんど。意外にも気軽にお食事を楽しめる感じで、もちろん英語も通じます。オンラインブッキングも可能なので、興味ある方は一度HPを覗いてみて下さい。

レストラン「Premnord」HP :Accueil - RESTAURANT PREMNORD

参考情報:
生産者 - ドメーヌ・プリューレ・ロック: https://domaine-prieure-roch.com/en/home/
輸入元 - ファインズ:ファインズ|ドメーヌ プリューレ・ロック

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