Domaine Georges MUGNERET-GIBOURG

Domaine Georges MUGNERET-GIBOURG

ドメーヌ・ミュニュレ・ジブール
ドメーヌ・ミュニュレ・ジブール

ドメーヌ・ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール - しなやかで、凛とした力強さを持った味わい

2024.07.25
ドメーヌ・ミュニュレ・ジブール ▲ 案内人:マリー・アンドレ・ミュニュレ女史

しなやかで、凛とした力強さを持った味わい
ヴォーヌ・ロマネの名門を支える家族のチームワーク

2024.06.20 --- writer Kasahara

web サイト
https://www.mugneret-gibourg.com/

1. ヴォーヌ・ロマネ村の概要

今更改めて説明する必要もないと思われますが、念のため…。
世界で引く手数多の高級赤ワインを造り出す、ヴォーヌ・ロマネ村。村全体では約180ヘクタールの畑があり、その半分強がヴィラージュ・ワインを造りだし、残りの約半分がプルミエ・クリュとグラン・クリュとなっている。グラン・クリュがブルゴーニュ及び世界中のワインの頂点に立つであろう、ロマネ・コンティを含めて6つ。プルミエ・クリュにもクロ・パラントゥーやマルコンソールなど有名な畑ばかりがずらりと並ぶ。

著名な生産者を挙げていくにも、これまた有名かつ歴史のあるドメーヌばかりと、人気が高いのも至極当然といえるだろう。ワインの味わいについては一般的に香りが華やかで、味わいは繊細と、これまた日本人が好みのタイプ。有名畑×著名生産者×エレガントな味わい、と3拍子そろったこの村はやはりマーケティング上も非常に引きが強いわけで、価格については他のコート・ド・ニュイのどのアペラシオンよりも一般的に高い。

さてそうした中でもこのドメーヌ・ジョルジュ・ミュニュレ・ジブールはヴォーヌ・ロマネ村でも名門一族。ミュニュレという名称が他でもよく見聞きするのは、このヴォーヌ・ロマネ村で多くいる名前だから。

2. ワイナリーの歴史

ドメーヌ入り口 ▲ ドメーヌ入り口
正面に見えるの青い屋根の家がオーベルジュの「ラ・メゾン・ド・ジャクリーヌ」 ▲ 正面に見えるの青い屋根の家がオーベルジュの「ラ・メゾン・ド・ジャクリーヌ」

ジャンヌ・ジブール氏

ジャンヌ・ジブール氏が1928年にアンドレ・ミュニュレと結婚し、1933年にドメーヌ・ミュニュレ・ジブールを設立。

ジョルジュ・ミュニュレ氏

一人息子のジョルジュ・ミュニュレ氏は、
ディジョンの眼科医であったが、医学のキャリアと並行して家業を継ぐことを決意し、次々と区画を購入してドメーヌを拡大。ドメーヌの名声を築いたジョルジュ・ミュニュレ氏が1988年に死去。

マリー=クリスティーヌ女史

その際に2人娘のうちのマリー=クリスティーヌ女史はワイン醸造を専門にするため、化学者の職を辞し、母親とともにワイン造りを引き継いだ。

マリー・アンドレ女史

その当時、大学生だった、マリー・アンドレ女史はディジョンのブルゴーニュ大学で醸造学の学位を取得し、1992年にドメーヌに戻って姉とともにドメーヌに参画。
2009年にそれまで2つあったドメーヌの名称(もう1つはジョルジュ・ミュニュレ)を1つに合わせて、現在のジョルジュ・ミュニュレ・ジブールとなる。また同年に母ジャクリーヌがドメーヌから引退し、以後娘2人がドメーヌの運営を引き継ぐ事となった。

現在では第3世代となるマリー=クリスティーヌ女史、マリー・アンドレ女史に、それぞれの娘が加わり、ドメーヌの運営を家族で支えている。

行き交うスタッフとやり取りしながら、カーヴを案内してくれた ▲ 行き交うスタッフとやり取りしながら、カーヴを案内してくれた
23年のワインの折引き作業でカーヴは大忙し!姉マリー・クリスティーヌさんの娘ルーシーさんが作業中 ▲ 23年のワインの折引き作業でカーヴは大忙し!姉マリー・クリスティーヌさんの娘ルーシーさんが作業中

3. 畑の特徴

所有する畑はジュヴレ・シャンベルタン、シャンボール・ミュジニー、ヴージョ、ヴォーヌ・ロマネ、ニュイ・サン・ジョルジュと広範囲に広がり、HPの情報によると全体で約8ヘクタール。意外にも所有するグラン・クリュはリュショット・シャンベルタン、クロ・ヴージョ、エシェゾーと、ヴォーヌ・ロマネ村内にあるグラン・クリュが無いのは意外な感じを受ける。
ちなみに先代ジョルジュ・ミュニュレ氏(マリー・アンドレ女史の父)は大学在学当時に、大叔父からクロ・ヴージョを購入する為の資金を借りて、畑を購入したというから驚きだ。

2018年に分益耕作(メタヤージュ)で貸し出されていたいくつかの畑が戻ってきており、これを受けて、2018年からドメーヌの前に広がる畑「ラ・コロンビエール」を今まで村名のヴォーヌ・ロマネにブレンドしていたのを、別キュヴェでリリースする事となった。

ドメーヌの前のラ・コロンビエールの畑で説明をするマリー・アンドレ女史 ▲ ドメーヌの前のラ・コロンビエールの畑で説明をするマリー・アンドレ女史
大叔父の時代の1931年に植樹したヴィエ―ニュ・ヴィーニュがある畑 ▲ 大叔父の時代の1931年に植樹したヴィエ―ニュ・ヴィーニュがある畑

ドメーヌから約11キロ離れた所にある畑、リュショット・シャンベルタンは、先代ジョルジュ・ミュニュレ氏時代からフレデリック・エスモナンに管理を委託して、醸造だけを行っていた。それをエスモナン氏にも相談の上、2年前からドメーヌ・ミュニュレ・ジブールのチームで栽培の管理をするようになったそう。

4. 醸造の特徴

カーヴへと誘う通路に朧気に現れるドメーヌの看板 ▲ カーヴへと誘う通路に朧気に現れるドメーヌの看板
2022年の出荷が始まり、カーヴ内はやはり大忙し ▲ 2022年の出荷が始まり、カーヴ内はやはり大忙し

ワイン造りの話をする時に何度か出た言葉が、

私たちはヴァン・ナチュールを造りたいわけではないの

そして他ドメーヌで度々話題に上がってきた「全房発酵」についても「私は基本的には(全房発酵自体が)好きではない」と話すマリー・アンドレ女史。その為、ほとんどのワインは基本的に除梗して醸造を行っている。

ただ2016年から全房発酵を試験的に醸造に取り入れた。
それも偶然が重なって始めたようで、始めた理由は「タンクを一杯にする為」だったそう。「2016年は霜害が出て、収穫量が最後までどうなるのかが分かりませんでした。その中でも発酵用にどのタンクを使用するのかを決めて行かなければいけません。そうして(タンクを)決めたのですが、いざ収穫してみると思った以上に収穫量が少なく、使用するタンクが一杯になりませんでした。その時に全房発酵を始めました。」

除梗していた時と比べると、熟成期間中にお花の香りがするようになったそうで、ワイン自体に何とも言えない香が出てくる、と全房発酵によるメリットも挙げつつも「今の私たちのスタイルが好きなワイン愛好家の方々がいるから」

と話して、全房発酵の割合をより高めていく、などの考えはないようです。自分達のスタイルをしっかりと守りつつ、新しい醸造方法も試す。醸造トレンドをただむやみに取り入れるというより、緻密に計算しながらワインを造り出すドメーヌの姿勢が話の中からもよく分かった。

5. 2023年ヴィンテージのテイスティング

2023年ヴィンテージのテイスティング ▲ 2023年ヴィンテージのテイスティング

ヴォーヌ・ロマネ

最初はヴォーヌ・ロマネから、
畑の区画を説明する為にテイスティング・ルームにある畑の地図の前で説明中。これは「所有しているヴォーヌ・ロマネ(村名)の畑を全てアッサンブラージュしたものです。先ほどのコロンビエールだけ、別キュヴェで造っています。宜しければ地図を見てみると分かりやすいかと思います。今試飲して頂いているのが、シャン・グーダンの一部と、プレ・ド・ラ・フォリー、国道の方にある畑です。80%強がここから来ています。5%がクロワ・ブランシュから。収穫時期はだいたい同じ時期なので、全て一つのタンクで発酵しています。」2023年らしい、強い果実味が出た味わいで、繊細で華やかなヴォーヌ・ロマネにいつもより肉付きが良い印象。

ヴォーヌ・ロマネ・ラ・コロンビエール

さて次に出てきたのはヴォーヌ・ロマネ・ラ・コロンビエール、ドメーヌの目の前にある畑だ。

この畑はドメーヌで一番古い畑で、2018年から別キュヴェでリリースするようになりました。コロンビエールの味わいは複雑味があり、輪郭がしっかりしていますよね。最初の村名のワインの方が分かりやすくて、華やかな感じがありますが、コロンビエールはもう少し堅牢な味わいです。

テイスティングマットに使用されていたのは、畑の地図になっている包装紙。 ▲ テイスティングマットに使用されていたのは、畑の地図になっている包装紙。
皆さんご存じ、エチケットに採用されている絵、こちらが原画だそう ▲ 皆さんご存じ、エチケットに採用されている絵、こちらが原画だそう

ニュイ・サン・ジョルジュ・プルミエ・クリュ、シェニョ

「次はニュイ・サン・ジョルジュ・プルミエ・クリュ、シェニョです、斜面の上の畑ですね。同じく100%除梗しています。畑の平均樹齢は50歳位。斜面の上部なので表土が薄く、場所によっては母岩が露出しているような場所です。アペラシオンはニュイ・サン・ジョルジュですが、ちょうど村の谷があって、川が流れているので北と南で味わいのニュアンスが異なりますが、この区画は北側のヴォーヌ・ロマネ側の畑なので、ヴォーヌ・ロマネのニュアンスを感じますね」
確かに非常に華やかで、味わいも複雑味があり果実味が強く前に出ている。

本当に分かりやすくて、開いているワインです。一番理解しやすい、という意味で最初にこのワインを紹介する事もあるんですよ

シャンボール・ミュジニー・プルミエ・クリュ・フスロット

次はシャンボール・ミュジニー・プルミエ・クリュ・フスロット「これはまたテロワールが全く異なります。背斜谷の先に村があり、更にその先にフスロットがあります。土砂が削られて体積して出来た畑です。その為表土があり、水が貯えやすく肥沃な土壌です。収穫量も毎年安定して多い畑です。畑の平均樹齢は50年近くですが、肥沃な土地で水も多い為、収穫量が多くなり過ぎないように、畑での剪定作業を厳しく行っています。少なめに芽を残し、芽描き、グリーンハーベストを行います。」

エシェゾー

エシェゾーの斜面上部は土が赤っぽい色で砂っぽい土壌、下のクロ・ド・ヴージョの石垣の裏にある場所の区画はいわゆる粘土石灰質で、いかにもクロ・ド・ヴージョに近い土壌です。それぞれが上部は繊細な感じで、下部は力強い味わいなので丁度良いバランスに仕上がります。」こちらのエシェゾーは一部全房発酵しており、その比率は12%。なぜそんなにピンポイントに?と思うような比率ですが、こちらはマリー・アンドレさんが、繰り返しどの割合が一番良いのかを試算し、年ごとに試してきた結果この割合になったそうです。

リュショット・シャンベルタン

続いてリュショット・シャンベルタン、全房発酵は23%と他のキュヴェと比べるとやや多め。
「全房発酵の割合っていうのは、タンクを見ながら量をみて試算した上で行っています。」
しかし本当に緻密にワイン造りを設計しているのだな、と納得。リュショット・シャンベルタンは一般的にミネラル感があり、繊細なグラン・クリュ、という印象があったが、ドメーヌ・ミュニュレ・ジブールは香りがスパイシーで果実味の力強さがあり印象的だった。この畑は1977年にドメーヌ・トマ・ボッソの売却時に、シャルル・ルソーに力を借りて父ジョルジュ・ミュニュレが取得したそう。

クロ・ヴージョ

最後はクロ・ヴージョ。「クロ・ヴージョは100%除梗です。果実味が全面に出てこないのは樽の差かもしれませんね。普段は若いヴィンテージを試飲しないのですが、23年は比較的今試飲しても飲める状態なので今日は試飲頂きました。」
確かに既に味わいの要素がまとまっていて、ヴィンテージの良さが分かる。

2023年は果実味と清涼感があるヴィンテージなのでそれもお楽しみいただけるでしょうか。

さて、肝心な日本市場でのリリース時期ですが、残念ながらまだまだ先…。何せこれから2022年がシッピング予定だとか。恐らく2023年ヴィンテージが日本に届くのは来年の秋以降、10月位?今から首を長くして待つしかない。

6. ラ・メゾン・ド・ジャクリーヌ(ドメーヌ直営のオーベルジュ!)

「la Maison de Jacueline」のHPからお部屋の写真 ▲ 「la Maison de Jacueline」のHPからお部屋の写真 *参考:Home - La Maison de Jacqueline

--- おまけ

2009年にドメーヌの運営から引退をした、マリー・アンドレ女史の母、ジャクリーヌさんが担当した肝煎りのプロジェクトが、ドメーヌの真横にあるオーベルジュの立ち上げ。
もともとはマリー・アンドレさんのお祖母ちゃんの実家、という話は既に伺いましたが、それを改築、洒落なオーベルジュに変わって2022年10月からオープンしました。もちろん、オーベルジュの名はお母さんの名前です!残念ながらドメーヌは一般公開されておりませんが、こちらのオーベルジュは別、一般公開されております。

目の前にはドメーヌの自社畑「ラ・コロンビエール」が広がり、隣はラ・ロマネの生産者として有名な「コント・リジェ・ベレール」のCuverieも。素敵なお部屋にと1階にはダイニングも完備。普段はディナーの提供はしていないようですが、オードブルとかは頼めば用意してもらえるそう。もちろんワインセラーの内容が充実している事は言うまでも無いので、興味がある方は是非下記サイトからチェック!
(時期によって室料は変わりますが、200ユーロから300ユーロ位のお部屋が多いようです。)

参考情報:
生産者 - ドメーヌ・ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール: 1000_Accueil (mugneret-gibourg.com)
輸入元 - ラック・コーポレーション:ラック・コーポレーション|ジョルジュ ミュニュレ ジブール (luc-corp.co.jp)

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