1. ペルナン・ヴェルジュレスの特徴
ブルゴーニュ地方コート・ドール県の南部、コード・ド・ボーヌ地区は、北部のコード・ド・ニュイ地区に比べると、傾斜が穏やかな丘陵地帯だ。今回訪問したドメーヌ・ラペの畑と醸造所はコート・ド・ボーヌ地区に位置するが、北部コート・ド・ニュイ地区と隣接するコルトンの丘の周辺にある。
畑の多くは、コルトンの丘の西向きの斜面となるペルナン・ヴェルジュレス村にある。夏は暑く、冬は寒い大陸性気候。コルトンの丘の斜面の上部は傾斜が急な石灰岩と粘土質が混ざる泥灰土で、斜面中腹になると小石が混ざる石灰質土壌、麓は粘土石灰質の土壌となる。ドメーヌ・ラペでは、ペルナン・ヴェルジュレス村の斜面上部でシャルドネを、斜面下部でピノ・ノワールを栽培している。
2. ドメーヌの歴史
歴史は古く、1765年以来ペルナン・ヴェルジュレスでワイン造りを続けている、家族経営の名門ドメーヌだ。 1765年のタストヴァン(ワインをテイスティングするために使われていた銀製の器)にドメーヌ名が刻まれていることから、少なくともこの年にはドメーヌが存在していたことが証明されている。この貴重なタストヴァンは代々引き継がれているそう。
現在は父ローラン氏から引き継ぎ、ヴァンサン氏と妻のシルヴェット女史がドメーヌを運営。長期熟成型のワインも多数製造されてはいるが、ヴァンサン氏の代からモダンな要素も取り入れつつ、早いタイミングで飲めるワインも造られている。
今回は、そのお二人のご子息、ロバン氏からお話を伺った。
3. 畑の特徴
畑はコルトンの丘の近辺、ボーヌの街から北に7km程のひっそりとした場所。ペルナン・ヴェルジュレス村を中心に、サヴィニー・レ・ボーヌ、アロース・コルトン、ボーヌに約24haの畑を有する。コート・ド・ボーヌ地方で唯一の赤のグラン・クリュであるコルトンの他、白のグラン・クリュであるコルトン・シャルルマーニュの畑も有する。
土壌環境やブドウ木の健全性を第一に、畑のコンディションに応じて、必要最小限の農薬のみを使用するリュット・レゾネ農法を用い、環境に配慮したブドウ栽培に注力している。畑の多くはペルナン・ヴェルジュレス村のコルトンの丘の西向きの斜面にあり、ピノ・ノワールとシャルドネを中心に栽培しているが、その他にアリゴテも栽培されている。
テロワールを大事にするラペ。温暖化についてはどう思っているのだろう?
とのこと。また、元々冷涼な地域だったブルゴーニュではブドウが熟しきらない年も多かった。そういう点から温暖化はブルゴーニュにとってプラスの側面もある。シャルドネとピノ・ノワールは両方ともテロワールが反映されやすい憑依体質のブドウ品種。シャルドネは暑さに強いので、温暖化の影響があっても問題ないと思うが、ピノ・ノワールは将来的には少し不安もある。だからと言って直ぐにブドウ品種を変えるという発想にはならない。適切なクローンを選ぶなどして対応していきたい。
ブレタノマイセス(欠陥臭を引き起こす酵母)は酸を嫌う性質がある。昨今の温暖化の影響でブドウの酸が落ちやすく、ブレタノマイセスが活発化しやすい環境にはある。そのため、きちんと酵母が働くような環境整備は行っている
とのこと。状況は楽観視しないものの、対策は施しつつ、決して慌てている様子ではないようだ。
4. 醸造の特徴
ラペで造られるキュヴェのラインナップは24種類。醸造では、「テロワールを尊重し、果実味を求めること」を第一にしている。そのため、醸造は穏やかで優しいアプローチ。
まず、収穫は全て手摘み。ブドウ果が潰れないように小さい箱を使って収穫される。2003年には新しい醸造所を建設し、収穫されたブドウはグラヴィティ・フローで負荷をかけずにタンクに移すことが可能になっている。
白ワインは全房を3時間半かけてゆっくり優しく圧搾。温度管理されたステンレスタンクで約24時間ブルバージュし、350Lの樽(新樽比率30%)で自然酵母を用いて発酵。7月まで樽熟成される。350Lの大樽を用いることで、澱とワインの接点が少なくなり、ワインがフレッシュなスタイルになるのだ。
赤ワインの場合は、1/3程度が全房。コンクリートタンクで低温マセレーションをし、色や香りを抽出させるが、発酵時のピジャージュはできるだけ行わず、抽出を控えめにしているそう。発酵後、228Lの樽(新樽比率20%)で熟成される。
5. ぜひ見てみてほしい
ラペを訪れる機会があったら見て頂きたいものが2つ。
まずは畑にあるもの。ラペのコルトン・シャルルマーニュの畑にある、アロース・コルトンとペルナン・ヴェルジュレスの境目にあるサン・ヴァンサン像だ。サン・ヴァンサンはワインの守護聖人。この像はラペのラベルのアイコンにもなっているので、実物を是非見てみてほしい。
もう一つが、ワインが眠る貯蔵庫。湿度80%、気温が14℃程度で管理されるワイン好きには堪らない場所だが、他とは違う雰囲気を感じる一角が奥の方にある…一歩足を踏み入れると、更に温度が低く感じられる。ここは1765年の創業時からある貯蔵庫の一角なのだ。350年以上の歴史が刻まれた場所らしく、カビも随所にあるのだが、歴史の重さをどっしりと感じさせてくれる空間だ。ぜひ、ワイナリーを訪問する機会がある方には足を踏み入れてほしい!
※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。また、まとめサイト等への引用を厳禁いたします。