アンリオ

極上シャルドネとピノ・ノワールによる贅沢泡
2024.02.16

Henriot
アンリオ

ラぺ

高品質なシャルドネとピノ・ノワールを贅沢に使うからこそ可能な豊かで複雑な味わいを提供しつづける、200年以上の歴史を持つ老舗メゾン!

2024.02.01 --- writer Yamamoto

web サイト
http://www.champagne-henriot.com/

1. シャンパーニュ地方の特徴

シャンパーニュとは、特定の地域で、特定の品種を使って、特定の製法で造られたものだけが名乗ることを許される魅惑の飲み物。スパークリング・ワインの中でも別格といって過言ではないだろう。
シャンパーニュ地方は、パリから東へ150km程度に位置し、TGV(電車)で45分程度と遠くない。シャンパーニュ地方全体は、南北に150km、東西に120kmに広がる広大な地域で、5つの地域に分けられるが、特に有名なのは、エペルネ周辺にある、モンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ、コート・デ・ブランの3つの地域。アンリオが畑を持つのもまさにこの地域だ。

▲ パリから電車でシャンパーニュ地方向かう場合、降りるのがランス。シックで落ち着いた街並みだ。
ランスに行ったら訪れたい大聖堂。シャガールによるステンドグラスもある。 ▲ ランスに行ったら訪れたい大聖堂。シャガールによるステンドグラスもある。

今回、アンリオExternal Relations Managerのヴァレリア・マカロヴァ女史に色々と話を伺った。
気候は冷涼な大陸性気候だが、海洋性気候の影響もあり降雨量は大陸性気候にしては多い。ブドウ栽培地域としては北限にあり、ブドウの完熟が難しい地域であるが、昨今は温暖化の影響でブドウも熟しやすく、収穫の時期も早まっているという。

シックでエレガント、知的でチャーミングなヴァレリア女史。 ▲ シックでエレガント、知的でチャーミングなヴァレリア女史。

シャンパーニュ地方といえば、白亜の石灰質土壌のイメージが強いが、実際には多種多様の土壌が存在する。また、標高300m程度の起伏に富んだ丘陵地にブドウ畑が広がることから、畑は様々な方角を向いている。生産面積は約3万4千ha。そのブドウ畑は28万区画に分けられており、全て異なるテロワールを持つというのだから驚きだ。これらの異なるテロワールで育つブドウをうまくブレンドして、シャンパーニュに仕上げていくのだ。因みに、319ある村の中で、グラン・クリュは17、プルミエ・クリュは42のみで、グラン・クリュは冒頭申し上げた3つの地域にのみ存在する。

車窓から。エペルネの街に向かう。 ▲ 車窓から。エペルネの街に向かう。
こちらも車窓から。エペルネの街からブドウ畑へ向かう道中。 ▲ こちらも車窓から。エペルネの街からブドウ畑へ向かう道中。

2. メゾンの歴史

シャンパーニュ地方の概要が分かったところで、アンリオの歴史に目を向けて行こう。 アンリオ家は17世紀からワイン造りに携わり、1808年にアポリーヌ・アンリオ夫人がメゾン・アンリオを設立。以降、今日まで200年以上の歴史があるメゾンだ。

テイスティングしながらアンリオについて色々お話を聞いた、迎賓館の中にあるスペース。 ▲ テイスティングしながらアンリオについて色々お話を聞いた、迎賓館の中にあるスペース。

アンリオのスタイルを語る上で重要になる出来事が2つある。まず、創業時にモンターニュ・ド・ランスの北部のピノ・ノワールのグラン・クリュ畑3つを引き継いだこと。そして、もう一つは、1880年に当時の主の婚姻により、コート・デ・ブランのシャルドネのグラン・クリュ畑を取得したことだ。この2つにより、高品質な両品種のブレンドによる長期熟成型のスタイルが完成。スタンダード・キュヴェを含め、すべてのシャンパーニュでグラン・クリュ、プルミエ・クリュを2/3以上使用するという贅沢な造りで、世界的にも品質の高さに評価が集まるメゾンとなったのだ。

シャンパーニュの貯蔵庫もご案内頂いた。 ▲ シャンパーニュの貯蔵庫もご案内頂いた。
1959年ものも!!! ▲ 1959年ものも!!!

因みに、アンリオはインターナショナル・ワイン・チャレンジでスパークリング・ワイン・メーカー・オブ・ザ・イヤーを2年連続で受賞した後、特別賞も受賞するなど、輝かしい実績を誇り、その上でさらなる品質の向上を目指している。

3. 畑の特徴

畑は、モンターニュ・ド・ランス、コート・デ・ブラン、ヴァレ・ド・ラ・マルヌの3つの地域に約35ha所有し、ピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエを栽培。その他、長期契約を結んだ栽培農家のブドウを使用している。
今回の訪問では、まず畑から見学。訪れた場所は標高230m付近だったが、畑の頂上は286mまで続く。その上は森林が広がる場所だ。畑は斜面に広がっていて、多方向に広がるのが見て取れる。斜面上部の土壌は森林の影響で茶色く、石灰質や粘土を含むが、下部に向かうとより石灰質が増え、白っぽい土壌が顔を出す。

畑で素敵なサプライズが❤アンリオのブリュット・スーヴェランを飲みながら話を聞けるとは…ピクニックバスケットからはクロワッサンまで飛び出す。ヴァレリア女史曰く「クロワッサンとシャンパーニュのマリアージュは鉄板」だそうなので、ぜひ皆様もお試を!
▲ 畑で素敵なサプライズが❤アンリオのブリュット・スーヴェランを飲みながら話を聞けるとは…ピクニックバスケットからはクロワッサンまで飛び出す。ヴァレリア女史曰く「クロワッサンとシャンパーニュのマリアージュは鉄板」だそうなので、ぜひ皆様もお試を!

シャンパーニュは石灰質中心だが、様々な土壌がある。例えば、アイ村にアンリオが所有する隣接する畑(Pisse LoupとBrise Pot)がある。10mほどしか離れていないが、異なる土壌環境で、石灰質の基盤の上に表土があるPisse Loupでは機械化が可能な一方、Brise Potは石灰質の層が厚く、ブドウ木の根が地層下部まで届かないことから、土作りに必要な作業は手作業とのこと。土壌の多様性が分かる話だ。

ヴァレリア女史が指さす左側の白っぽい土壌がBrise Potの土壌。その隣がPisse Loup。隣接する畑とは思えないほど、土壌が全く異なるのが分かる。▲ ヴァレリア女史が指さす左側の白っぽい土壌がBrise Potの土壌。その隣がPisse Loup。隣接する畑とは思えないほど、土壌が全く異なるのが分かる。

アンリオの畑の特徴は、何と言ってもその格付け比率の高さだろう。使用するブドウの大半がグラン・クリュとプルミエ・クリュの畑から収穫したブドウ。最高の立地でブドウを栽培しているのだ。
もう一つ、新しい動きもチェックしておきたい。アンリオでは、有機栽培への転換も推進している。冷涼で、比較的多湿なシャンパーニュ地方で有機栽培を行うことは決して容易ではない。しかし、アンリオはテロワールの維持や環境保全の観点から、たとえコストが上がったとしても有機栽培に舵を切ったのだ。数年先には認定を受けている可能性もあるので、知らせが届くのが楽しみだ。

アンリオの畑にて。遠くの眼下に街があり、斜面にブドウ畑が広がるのが良く分かる。 ▲ アンリオの畑にて。遠くの眼下に街があり、斜面にブドウ畑が広がるのが良く分かる。
ブドウ収穫後だったが、収穫されずに残ったブドウがちらほら。キレイに色付いている。 ▲ ブドウ収穫後だったが、収穫されずに残ったブドウがちらほら。キレイに色付いている。

4. 醸造の特徴

シャンパーニュと言えば、アッサンブラージュ。異なる畑、異なるブドウ品種、異なる収穫年のワインがブレンドされてメゾンのスタイルを造り上げるのだ。アンリオの創業当時から造り続けているスタンダード・キュヴェ「ブリュット・スーヴェラン」を例にして見てみよう。29の異なるクリュのブドウを使用し、クリュごとに発酵させる。品種はピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエの3品種。ベースワインに加え、リザーヴ・ワインを50%程度使用しており、異なる収穫年のワインがブレンドされているのだ。

シャンパーニュ地方の地図を確認しながら、お話を聞く。フィンガーフードのレヴェルが高い!ついつい手が伸びてしまう…▲ シャンパーニュ地方の地図を確認しながら、お話を聞く。フィンガーフードのレヴェルが高い!ついつい手が伸びてしまう…

アンリオの特徴を3つ挙げておきたい。

高いシャルドネ比率

スタンダード・キュヴェの「ブリュット・スーヴェラン」でもシャルドネを40%使うなど、高いシャルドネ比率を誇る。因みに、シャンパーニュ地方の平均が30%程度ということなので、その高さが分かるだろう。1880年にコート・デ・ブランの畑を取得したことが大きく影響しており、以降、良質なシャルドネを贅沢に使うことが、アンリオのオリジナリティになっている。

こちらは、コート・デ・ブランのグラン・クリュ、アヴィーズのシャルドネ100%で造られた「リナタンデュ 2016」。▲ こちらは、コート・デ・ブランのグラン・クリュ、アヴィーズのシャルドネ100%で造られた「リナタンデュ 2016」。

豊富なリサーヴ・ワイン

アンリオでは、リザーヴ・ワインがふんだんに使われている。スタンダードの「ブリュット・スーヴェラン」でも50%程度使うなど、贅沢な造りになっている。そのリザーヴ・ワインの造りも贅沢で、過去10年分程度の直近のクリュ別・ヴィンテージ別のリザーヴ・ワインに加え、1969年から続く、全てのワインがブレンドされた秘蔵の「永遠のリザーヴ・ワイン」もブレンドされているのだ!

1990年から継ぎ足してきたリザーヴ・ワインがベースの、ブラン・ド・ブランのプレステージ キュヴェ「Cuve 38」のマグナムボトル。まさにフレッシュさと熟成感を一度に味わえる「永遠のリザーヴ」だ。こちらは6thエディションで、1990年から2012年の23年分のリザーヴ・ワイン使い、9年の瓶熟を経たもの。 ▲ 1990年から継ぎ足してきたリザーヴ・ワインがベースの、ブラン・ド・ブランのプレステージ キュヴェ「Cuve 38」のマグナムボトル。まさにフレッシュさと熟成感を一度に味わえる「永遠のリザーヴ」だ。こちらは6thエディションで、1990年から2012年の23年分のリザーヴ・ワイン使い、9年の瓶熟を経たもの。

長い熟成期間

高品質なブドウ/ワインを使っているからこそ、熟成期間を長くすることが可能となる。ノン・ヴィンテージの場合、最低瓶熟期間は15ヶ月と規定されている中、アンリオは3-5年の瓶熟を加えているのだ。高品質な素材を使って長期熟成したからこそ表現される、複雑で深みのあるエレガントな味わいを楽しめるという訳だ。

ミレジムもNVも高品質な素材だからこその味わい!
▲ ミレジムもNVも高品質な素材だからこその味わい!

5. 圧巻の迎賓館!

畑の見学の後、コート・デ・ブランの入口のピエリ―村にある、アンリオの迎賓館「レ・ゾルノワ」でランチをご馳走に。この迎賓館の美しさに圧倒される!!

▲ (左)表側からみた迎賓館。(中央)庭側から見た迎賓館。(右)シンメトリーに整備された庭園も美しく、ため息が漏れる。

アンリオがこの建物を入手したのは2014年。現在の建物は1778年に建築されたもので、代々シャンパーニュの一族に所有されてきたそうだ。因みに、14世紀には、この場所で修道僧がワイン造りを行っていたそうで、修道僧がワイン造りに使っていたプレス機も残っている。アンリオ家が修復し、現在展示されているそうだ。

ランチ会場。完璧なしつらえで、場違いなところに来たのではないかとオドオドしてしまう。笑
▲ ランチ会場。完璧なしつらえで、場違いなところに来たのではないかとオドオドしてしまう。笑

ランチのコースも絶品、もちろんシャンパーニュは悶絶級に美味しい。食事との相性も素晴らしいのだ。一生分の運をここで使い果たしたのではないか…と思わされる贅沢なひと時で、夢をみさせてくれる場所。 恐るべしシャンパーニュ、恐るべしアンリオである。

Cuve38を注ぐ姿が、何度見ても映画のワンシーンにしか見えない… ▲ Cuve38を注ぐ姿が、何度見ても映画のワンシーンにしか見えない…

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