ドメーヌ・ラペ

長い家族の歴史を感じさせる、実直なドメーヌ
2024.02.01

Domaine RAPET
ドメーヌ・ラペ

ラぺ

長い家族の歴史を感じさせる、実直なドメーヌ

2024.01.30 --- writer Yamamoto

web サイト
https://www.domaine-rapet.com/

1. ペルナン・ヴェルジュレスの特徴

ブルゴーニュ地方コート・ドール県の南部、コード・ド・ボーヌ地区は、北部のコード・ド・ニュイ地区に比べると、傾斜が穏やかな丘陵地帯だ。今回訪問したドメーヌ・ラペの畑と醸造所はコート・ド・ボーヌ地区に位置するが、北部コート・ド・ニュイ地区と隣接するコルトンの丘の周辺にある。
畑の多くは、コルトンの丘の西向きの斜面となるペルナン・ヴェルジュレス村にある。夏は暑く、冬は寒い大陸性気候。コルトンの丘の斜面の上部は傾斜が急な石灰岩と粘土質が混ざる泥灰土で、斜面中腹になると小石が混ざる石灰質土壌、麓は粘土石灰質の土壌となる。ドメーヌ・ラペでは、ペルナン・ヴェルジュレス村の斜面上部でシャルドネを、斜面下部でピノ・ノワールを栽培している。

車窓から見えたコルトンの丘。頂上以外の斜面一面がブドウ畑になっている様子が良く分かる。 ▲ 車窓から見えたコルトンの丘。頂上以外の斜面一面がブドウ畑になっている様子が良く分かる。

2. ドメーヌの歴史

歴史は古く、1765年以来ペルナン・ヴェルジュレスでワイン造りを続けている、家族経営の名門ドメーヌだ。 1765年のタストヴァン(ワインをテイスティングするために使われていた銀製の器)にドメーヌ名が刻まれていることから、少なくともこの年にはドメーヌが存在していたことが証明されている。この貴重なタストヴァンは代々引き継がれているそう。

壁の左側中央にタストヴァンの写真が飾られている。その他、中央下には現当主のヴァンサン氏と妻のシルヴェット女史の写真や右側には2人の大きな絵も飾られている。 ▲ 壁の左側中央にタストヴァンの写真が飾られている。その他、中央下には現当主のヴァンサン氏と妻のシルヴェット女史の写真や右側には2人の大きな絵も飾られている。

現在は父ローラン氏から引き継ぎ、ヴァンサン氏と妻のシルヴェット女史がドメーヌを運営。長期熟成型のワインも多数製造されてはいるが、ヴァンサン氏の代からモダンな要素も取り入れつつ、早いタイミングで飲めるワインも造られている。
今回は、そのお二人のご子息、ロバン氏からお話を伺った。

ロバン氏。思わず皆から「男前~」という言葉がこぼれ出た(笑)。細かい質問にも丁寧に答えてくれる実直な人柄も魅力的。 ▲ ロバン氏。思わず皆から「男前~」という言葉がこぼれ出た(笑)。細かい質問にも丁寧に答えてくれる実直な人柄も魅力的。
ロバン氏の父親で現当主のヴァンサン氏も途中挨拶に来てくれた。お父さんも渋いです! ▲ ロバン氏の父親で現当主のヴァンサン氏も途中挨拶に来てくれた。お父さんも渋いです!

3. 畑の特徴

畑はコルトンの丘の近辺、ボーヌの街から北に7km程のひっそりとした場所。ペルナン・ヴェルジュレス村を中心に、サヴィニー・レ・ボーヌ、アロース・コルトン、ボーヌに約24haの畑を有する。コート・ド・ボーヌ地方で唯一の赤のグラン・クリュであるコルトンの他、白のグラン・クリュであるコルトン・シャルルマーニュの畑も有する。

ドメーヌ入口付近からみた景色。街に派手さはなく、落ち着いた雰囲気でほっとする。 ▲ ドメーヌ入口付近からみた景色。街に派手さはなく、落ち着いた雰囲気でほっとする。
ドメーヌ入口も味わい深い。 ▲ ドメーヌ入口も味わい深い。

土壌環境やブドウ木の健全性を第一に、畑のコンディションに応じて、必要最小限の農薬のみを使用するリュット・レゾネ農法を用い、環境に配慮したブドウ栽培に注力している。畑の多くはペルナン・ヴェルジュレス村のコルトンの丘の西向きの斜面にあり、ピノ・ノワールとシャルドネを中心に栽培しているが、その他にアリゴテも栽培されている。

醸造所を出てすぐそばの畑の様子。今回は時間の関係で遠目に畑を見るだけだったが、整然とした畑の様子や陽当たりの良さなどが見て取れる。
▲ 醸造所を出てすぐそばの畑の様子。今回は時間の関係で遠目に畑を見るだけだったが、整然とした畑の様子や陽当たりの良さなどが見て取れる。

テロワールを大事にするラペ。温暖化についてはどう思っているのだろう?

元々冷涼な地域だったブルゴーニュではブドウが熟しきらない年も多かった。そういう点から温暖化はブルゴーニュにとってプラスの側面もある。シャルドネとピノ・ノワールは両方ともテロワールが反映されやすい憑依体質のブドウ品種。シャルドネは暑さに強いので、温暖化の影響があっても問題ないと思うが、ピノ・ノワールは将来的には少し不安もある。だからと言って直ぐにブドウ品種を変えるという発想にはならない。適切なクローンを選ぶなどして対応していきたい。

とのこと。また、

ブレタノマイセス(欠陥臭を引き起こす酵母)は酸を嫌う性質がある。昨今の温暖化の影響でブドウの酸が落ちやすく、ブレタノマイセスが活発化しやすい環境にはある。そのため、きちんと酵母が働くような環境整備は行っている

とのこと。状況は楽観視しないものの、対策は施しつつ、決して慌てている様子ではないようだ。

テイスティングをしたテーブルの上には土壌サンプルが。こうして見比べると違いがよく分かる。▲ テイスティングをしたテーブルの上には土壌サンプルが。こうして見比べると違いがよく分かる。

4. 醸造の特徴

ラペで造られるキュヴェのラインナップは24種類。醸造では、「テロワールを尊重し、果実味を求めること」を第一にしている。そのため、醸造は穏やかで優しいアプローチ。
まず、収穫は全て手摘み。ブドウ果が潰れないように小さい箱を使って収穫される。2003年には新しい醸造所を建設し、収穫されたブドウはグラヴィティ・フローで負荷をかけずにタンクに移すことが可能になっている。

醸造所の中の様子。セメントタンクやステンレスタンクが並ぶ。収穫が午後になることもあるため、その場合は必ずブドウを一旦冷却しているそう。▲ 醸造所の中の様子。セメントタンクやステンレスタンクが並ぶ。収穫が午後になることもあるため、その場合は必ずブドウを一旦冷却しているそう。

白ワインは全房を3時間半かけてゆっくり優しく圧搾。温度管理されたステンレスタンクで約24時間ブルバージュし、350Lの樽(新樽比率30%)で自然酵母を用いて発酵。7月まで樽熟成される。350Lの大樽を用いることで、澱とワインの接点が少なくなり、ワインがフレッシュなスタイルになるのだ。

白ワインの場合は、温度を下げる意味での温度管理を行うことが多いが、温度上げてマロラクティック発酵を促すことも。写真左側にヒーターを設置しているのが分かる。 ▲ 白ワインの場合は、温度を下げる意味での温度管理を行うことが多いが、温度上げてマロラクティック発酵を促すことも。写真左側にヒーターを設置しているのが分かる。

赤ワインの場合は、1/3程度が全房。コンクリートタンクで低温マセレーションをし、色や香りを抽出させるが、発酵時のピジャージュはできるだけ行わず、抽出を控えめにしているそう。発酵後、228Lの樽(新樽比率20%)で熟成される。

醸造所内には卵型のコンクリートタンクも。 ▲ 醸造所内には卵型のコンクリートタンクも。
テイスティングの最後、「Pernand-Vergelesses Premier Cru ▲ テイスティングの最後、「Pernand-Vergelesses Premier Cru "Les Vergelesses" 1969」を試飲させて頂いた。この年は当時にしては非常に暑く、通常10月に行っていた収穫が9月上旬に行われたそう。燻製や生ハムのような熟成香がぶわぁ~と広がり、コンポートや蜜っぽさも。果実味も感じられる。50年以上を経るとこんな妖艶な姿になるのかぁと驚かされたのだ。

5. ぜひ見てみてほしい

ラペを訪れる機会があったら見て頂きたいものが2つ。
まずは畑にあるもの。ラペのコルトン・シャルルマーニュの畑にある、アロース・コルトンとペルナン・ヴェルジュレスの境目にあるサン・ヴァンサン像だ。サン・ヴァンサンはワインの守護聖人。この像はラペのラベルのアイコンにもなっているので、実物を是非見てみてほしい。

ドメーヌにある看板の真ん中にサン・ヴァンサン像のモチーフが。 ▲ ドメーヌにある看板の真ん中にサン・ヴァンサン像のモチーフが。
醸造所にもこんな像が飾られている。 ▲ 醸造所にもこんな像が飾られている。

もう一つが、ワインが眠る貯蔵庫。湿度80%、気温が14℃程度で管理されるワイン好きには堪らない場所だが、他とは違う雰囲気を感じる一角が奥の方にある…一歩足を踏み入れると、更に温度が低く感じられる。ここは1765年の創業時からある貯蔵庫の一角なのだ。350年以上の歴史が刻まれた場所らしく、カビも随所にあるのだが、歴史の重さをどっしりと感じさせてくれる空間だ。ぜひ、ワイナリーを訪問する機会がある方には足を踏み入れてほしい!

真ん中の樽の奥が1765年の創業時からある貯蔵庫の一角。色合いが黒いのが分かるだろう。 ▲ 真ん中の樽の奥が1765年の創業時からある貯蔵庫の一角。色合いが黒いのが分かるだろう。
中を覗いた様子。ズンとした重さを感じ、夜中に一人で行くのはちょっと怖いくらいだ… ▲ 中を覗いた様子。ズンとした重さを感じ、夜中に一人で行くのはちょっと怖いくらいだ…

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